第40話 迷宮にて

「いました!」

「急ごう」

 路地の奥隅にいた遭難者を二人の男が助け起こす。

 消防団員の恰好をした青年が遭難者を背負い、ラフな私服姿の中年男が先導し、入り組んだ路を迷いなく進む。数刻後には路地を脱し、待機していた医療班に遭難者を引き渡した。

「間に合ったな」

「ああ。今回も助かりました」

 遭難者を見送ると、青年が男に礼を告げた。

「なぁに。役に立てたんなら幸いだ」

 向き直った男の胸には、両刃の斧をあしらったペンダントが光り輝いていた。

 迷宮調査団クレケットの称号だ。

「しかし、見事な脱出ですね。どうやって道を把握してるんですか?」

「説明するのは難しいな」

 と、二人は出てきたばかりの路地を振り返る。

 かつて、落星狂奔ジュエルラッシュにより集まった採掘労働者向けに無秩序に増築された安価集合住宅群の成れの果て。それが今では迷宮と呼称され、面白半分で探検に入った者を飲み込む魔窟と化していた。

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short TaleS Aruji-no @Aruji-no

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