第6話 ぽつりぽつりと、ゆっくりと

 テレビによると今日は11月17日。


 被害は拡大の一途をたどっているようだった。当初、政府はすぐにこの町を封鎖し、被害を食い止めようとした。しかし対応自体が致命的に遅く、すでに他の町にまでゾンビの侵入を許していたせいで、封鎖は失敗に終わったようだ。

 隕石から離れた場所では、僕たちがなったように、前触れなく空気感染するようなことはないようだけれど、人間以外の動物などもゾンビ化しており対応の難しさがあるようだ。まぁもちろんそんな外の世界のことは、もはや僕らにはまったく関係がない。


 僕たちは、ぽつりぽつりと、ゆっくりと、ずっと会話を続けていた。

 

 僕自身、腐敗が進んでいるから、彼女の状況は良くわかる。意識がどんどん薄れ、猛烈な眠気にあらがっているのに似ている。眠気に負けて意識を手放したとき。その時がきっと本当の「ゾンビ」になるときなのだ。なにかを話していないと不安なのだ。


「今年は一緒に、クリスマスを祝えるかな」


「どうだろう……」


「同棲とか言わずに、早く結婚しておけばよかったね」


「どうだろう……」


「そこは肯定しといてよ」


「そうだね」


「もう……」

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