第4話 失恋

今まで本気で恋をすることが怖くて避けてきた本職にとって、今回の初めての恋は本職の心を深く傷つけるものであった。


今までの彼からの行為は全て悪戯で、勝手に勘違いして恋の奴隷へと狂っていった本職から発する好意は永遠に届くことはなかった。


臆病な本職は絶対に彼から嫌われたくないから、精々「大嫌いの反対。」ぐらいしか口に出せず、いつも夜は独り深く沈んでいったのである。


彼の同期から彼に好きな女性がいると聞いたのはつい1週間前の出来事である。


無理だと分かっているのに淡い期待を寄せては一喜一憂してきた本職はその事を聞いた日に激しく泣いた。


泣き腫らした目から見えた、以前彼が寄りかかった本職の布団を抱いたが彼の匂いはもうしなかった。


「好きな人はいないって言っていたのに、嘘つき。」


彼を嫌いになろうとしても忘れられなくて、苦しくて辛い気持ちばかりが退いては再び押し寄せる。


しかし、やっと諦められる、約半年想い続けて、長かった。


本署で会えても、この好意はひた隠して接していかなくてはならないと覚悟した。


いっそのこと、心が潰れてなにもかも失くなってしまえばどれほど良かったことか。


自身の心を労っている暇はない、会うたびに好きな気持ちを誤魔化して、ばれないように瞳を真っ直ぐに見ていかなければならない。


瞳の奥に淡い期待を抱きながら、"私"はまだ好きでいる・・・


君が好きだ


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本職は同性に恋をしたものである。 @nogiguchi

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