五月七日
創立記念日の今日。
多くの生徒は近くのテーマパークまで足を運び羽を伸ばしている。俺たちが通っている釜切高校、通称『釜高』は部活動にあまり力を入れておらず、祝日に活動している部活は少ない。
俺が所属している文芸部は基本的に休みが多い‥‥と思う。幽霊部員だから知らん。
などと考えながら石造りの階段を一段、また一段と上がっていく。
日が一番高くのぼるこの時間に右手にレジ袋、左手にバケツを持って目的地へと向かう。
額から流れる汗が耳の前を通り、首まで落ちていくのを感じた。
「何してんだろ、俺」
呟きが空へと溶けていく。
何をしているかは自分が一番分かっている。分かってなければいけない。
階段をのぼりきり、休憩を挟もうとバケツを下に置くとピロンと通知音が鳴った。一度で止まらずピロン、ピロンと連続して鳴り始める。
やがて通知音は着メロへと変わっていった。
ポケットからスマホを取り出すと画面に翠の名前が表示されていた。
迷わず応答拒否を押し、ポケットにしまい歩き出す。
それから五分歩くと目的地に到着していた。
『遅いよ、もっと早く来れなかったの?』
と言いたげなその姿にバケツの水をかけてやった。
そしてレジ袋からハンバーガーを取り出し、口の中に放り込む。
そして無意識に呟いた。
「何してんだろ」
ラブ制作コメディ 根鶴 蒼 @netsuru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ラブ制作コメディの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます