エイプリルフール…。

宇佐美真里

エイプリルフール…。

「アナタなンて、大キライ…」

前を歩く彼に向かって、

聞こえるか聞こえないかのギリギリの大きさで、

私は言ってみた。


「ボクも、キミのそういうトコロ…キライなンだ…」

彼は立ち止まり、私に振り返るコトなく言った。


「え?」

私も立ち止まる。少しだけ不安になる…。

「ウソ…だよネ?」

「いや、ウソじゃない。ホントのコトさ…」

ようやく振り返ると彼は、ぼそっと呟いた。

私と目を合わせることもなく…。


彼のコトバ、どれが"ホントのコト"なの?

"今日"だから、そんなコトを言うンだよネ?

"今日だから"…私、言ってみた…だけなのに。

"キライ"がウソ?"ウソじゃない"…がウソ?


ウソなのは、どの部分?


私は、再度コトバを投げる…。

「今日がエイプリルフールだから…だよネ?」


「あれ?そうだったっけ?気づかなかったヨ。

 エイプリルフールだったンだ…今日?」

意地悪そうに笑いながら彼は、

ようやく私と目を合わせた。



彼の胸を私は、

げんこつで思い切りパンチしてやった。

「もうっ!うそつきっ!」


「キミもネ…」



-了-

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エイプリルフール…。 宇佐美真里 @ottoleaf

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