世界邪神会議 World Evil god Meeting

其乃日暮ノ与太郎

 

「えぇ~では、第37564回目の会議を始めたいと思います。

議長は天から追放されたものの、滅びまで猶予期間を与えてられた配下の天使が反旗を翻した堕天使のサタンが務めさせて頂きますので宜しくお願い致します」


地獄のおさが円卓に着席したメンバーを見渡してから議題に触れる。


「依然としてわたくしの望みで喫緊の課題である哺乳類サル目ヒト科の完全滅亡に至っていないという結果が残念でなりません」


言い終わりと同時にある者が両の掌を頻りに擦り合わせながら弁を述べた。


「ウガリット辺りを担当するベルゼブブです。先に蔓延させた疫病では絶大な効果が出ていない事に関しては反省しております。ですが、未だに終わりが来ないと人間共が不安がっているのは事実でございます」


その姿を冷ややかな眼で議長が流し、尖った尾の先で周囲を指す。

「何か良い方法や案を提出したいという者は居ないか」

これに巷では美形で通っている顔を緩めながら真っ先に名乗り出た者が。


「イスラムを主戦場としている不肖、イブリースは専門分野が誘惑でして、甘い言葉や謳い文句で民衆を誘い財産を吸い取って身の破滅におちいらせる術を駆使したいと考えます」


「う~ん……それチョット弱くね?」

長はかなりご不満の様子だ。

お次が二股に分かれた舌をペロペロ出しながら挙手をした。


「エジプトで活動しているアポフィスですが、太陽の運行を邪魔して日食を起こす事が可能ですので是非とも私奴わたくしめに任せていただければ……」


これに角質化した皮膚を搔きながらの者が追随した。


「それならば……、おっと申し遅れましたな。ゾロアスターの方からやって来ましたアンラ・マンユでございます。自分は冬や悪などの16の災難を創造した経験から厳冬を通り越した氷河期を訪れさせる事を提案したいと思います」


サタンが腕組みをして頷く。

「アポフィスとマンユの合わせ技ね、いいんじゃないかな。他にはないか?」

議事主宰者に促されたのを或る者がデカい図体を強調しながら応えた。


「北欧が滞在地のロキです。私は民衆を欺きパニックを引き起こした実績がありますのでデマやフェイク動画をインターネットを介してばら撒き、人間同士の不信感を煽る手法なんてのは如何いかがでしょうか」


「それはインパクトに欠けるな。却下。次」

これに8番目の頭を19本目の腕で撫でながら6本目の手を挙げた者の知恵が。


「ラーマーヤナを対象範囲としているラーヴァナだが、わしは飲むと不死になる蜜を確保しておりまして、それを薄めて効能を落とした上で配合した薬を摂取させ、全世界総高齢化社会におとしいれるというのはどうじゃろ」


この策に長はお気に召さない表情になる。

「それって時間が掛かりそうだな。他は?」

少しの間を置き、肉球でたてがみを弄りながら申し出る者が。


「アッカド領域に属するパズズでございます。水稲や畑作作物のみならず全ての草本類を短時間のうちに食べ尽くしてしまう蝗害こうがいを最も得意としておりまして、群生行動で航空機の飛行を妨げるのも期待できる飛蝗現象はどうでしょうか」


「それだと雄大な自然も無くなっちゃう訳だし、自陣の領域に誤って失点してる感があるじゃん。だ」


拗ねた主宰者。

「もう無いのか、後は?」

議長が急かすがしかし、世間話と私語が何処からともなくに始まっていた。


「おいロキ、あの生命体なに?」

「あれはお茶汲みだよ。神話界隈で新顔のクトゥルフんとこのショゴス」

イブリースが続ける。

「給仕が雌の仕事ってのはマズいって話になって雌雄しゆう雇用機会均等法に則ってアイツに変わった」

「そういえば入口の警備員がメドゥーサだったな」


サタンがとうとう業を煮やして机を両手で叩きながら立ち上がった。


「あくまでも俺は行き着く先は人間を根絶やし、人類絶滅を最終目標としているんだよ、お前ら理解してる?」


「はぁ?そんな事言っても……」

「試しにやってみればいいじゃ……」

「だったら自分もアイディア出せ……」

「テメーのは昔失敗しただろう……」

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また今日も人類が誕生してから一度も成し遂げられていない終焉ゴールへの最善策を模索する会議が紛糾した。

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