42.案内係(香り編)
かぼちゃ大福でほくほくした後、駅の方に向かって歩いていた。
「次は駅近くにあるカフェを紹介するよ。いつもお店の外もいい匂いがしてるんだ」
「そうなんですね」
またおしゃべりも止まってしまう。やはりたくさん話しかけた方がいいのか、必要以上の会話は避けた方がいいのか。冬城君はどっちタイプなんだろう。教室でも自分から話しかけるみたいなのはあまり見かけないような気もするな。控え目でいよう。
「猫宮さんは……」
話しかけてくれた!
「よく放課後、お友達と遊んだりしますか」
疑問形、かな? 聞かれたのかな。
「部活してたり、習い事してたりする子が多いから放課後一緒にっていうのは少ないかなぁ。私も委員会には入ってるからその当番もあるし」
「そうですか」
ちゃんと答えられたかどうか。
「委員会って何をやっているんですか」
「図書委員だよ」
「じゃあ、図書室で会うかもしれないですね」
この調子で話題を広げようと思った時には遅く、もう目的地に着くところだった。
「あ、もう着きます」
しゅんとした気持ちが言葉に出た。
外まで焙煎したコーヒーの香りが漂う、可愛らしいカフェに着いた。
「いい香りですね。こういうところを知っているのはすごいです」
「自信満々に紹介してるけど、実はなつかちゃんに教えてもらったんだけどね」
「同じクラスの」
「そうだよ。じゃあ、入ろうか」
動揺したような顔をした冬城君。
「あ、いや、今日はもう帰ります。次、また今度にします」
「え、あ、そうか、そうだよね。あまり遅くならない方がいいよね」
「それでは、これで。ありがとうございました」
そう言って早歩きで行ってしまった。
残ったのは私、そしてコーヒーと冬城君の柔らかい香りだけ。
私はこの案内という中で何かを間違えた? ショックを受けながら帰るとしよう。
二人きりで向かい合って笑顔で会話? そんなの今の僕には出来ない。
「恥ずかしいよ」
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