34.悪タイミング


 帰りに買い物を頼まれた。今日はスーパーではなく、ドラッグストア。割引の日らしい。


 一度家に帰ってもいいんだけど、帰ることにより買い物のやる気が無くなってしまう。ただでさえほぼ無いのに。


 家の近くを通り過ぎ向かう。あれ、この立地なら最寄じゃなくて、その前の駅で降りた方が近かったかな。なんて思いながら、買う物を思い出す。


 ちょっと遠かったなぁ、ゼイゼイと息を吐きながら、涼しい店内に入る。


「サプリ、絆創膏、目薬……多いな」


 そう呟きながら、目当ての物を探す。カゴを持ってきた方がいいかもしれない。近くにあったカゴを持ち、売り場をうろつく。


 途中の通路に見覚えのある茶髪のハーフアップの頭を発見。

 その人物がふっとこちらを見た。真顔だった顔がぱぁっと笑顔になり、こう言った。


「あっ、猫ちゃん。こんなところで会うなんて運命かな? 家は近くなの? カゴ重くない? この後お茶でもどう?」


 光先輩の弾丸トークである。


「先輩、こんにちは。家はちょっと距離ありますね。そんなに近くではないです。先輩は家近いんですね」

「いや、俺は全然近くはないんだ。バイクだからすぐだけどね」

「わざわざここに?」

「うーん、まぁそうだね。知ってる人に会わないかもなぁって思って……」


 誰にも会わないようにここに来たのか。それだったら、私に会ってしまったら良くないんじゃ。


「そうでしたか、じゃあ私もこれで」

「いや、いいんだよ。猫ちゃんは特別。会えて嬉しいよ。でも俺が猫ちゃんの買い物の邪魔をしてしまったね。それじゃあ、また学校でね」


 光先輩はそう言って、何も買わずに出口へと行ってしまった。やっぱり私が邪魔を

してしまったようだ。今度謝らないと。


 そして私は重たい袋を持って帰路についた。


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