イヤリングの魔法
何か、視線を感じる。JKに人気な可愛らしい雑貨屋さんに入り、隅の方にあった、私には馴染みのないイヤリングコーナーをぽやーっと見上げていると、横から痛いほどの視線が私の頬にぶつかってきた。
「なに、どうしたの矢萩ちゃん?」
目をそちらには向けずに答えると、ビクッと肩をあげている。自慢ではないが、私は視野がかなり広い。他人からは、こちらを見ていないからイタズラでもしてやろうと後ろのほうから来られても、結構見えてる。だから、横から矢萩ちゃんが視線をそろそろと送っていたのもばっちり見えていた。
「ううん、何でもない。イヤリング、晴海ちゃんも何か付けてみたら?」
そう言う矢萩ちゃんの耳には赤紫っぽい色のフワフワ毛玉が下がっている。それによって顔が明るめに見えて、なお可愛らしい姿になっている。でも……
「わ、私にはそんな、似合わないよ。ほら、私はオシャレとか気にしないし。女の子っぽくないから。」
そう言ってポニーテールをゆさゆさ揺らすと、「えー」と不服そうな声があがり、矢萩ちゃんの目はイヤリングをなぞっていた。
「絶対似合うから!保証するから!あ、これとかどう??」
矢萩ちゃんが手に取ったのは、ピンクのお花がついた小さめのイヤリング。私を引っ張り、鏡の前に立たせ、耳にそれをあてる。
……可愛い「可愛い!」
心の中を見透かされたかと思いビックリしたが、鏡越しの矢萩ちゃんの表情がキラキラしていた。
「いいじゃんいいじゃん!私がこれあげるよ!いくらかな……?お、500円!安っ!この店めちゃお得だぁ。リピしよ。」
彼女は色々呟きながら私の答えも聞かずにレジの方に言ってしまった。
「えちょっと待って……!」
………でも、少し、可愛かったかも。
そして、会計を済ませた矢萩ちゃんからイヤリングを受け取り、早速つけた。その時、初めてオシャレというものに触れたとき、こう思ってしまった。
拓真に、見て欲しいな。
そんなことを考えるなんて、私も未練がましかったんだね。まぁでも、つい最近まで好きな人だったんだからそう思うのもしょうがないか。今はドキドキもしないし。全然トキメかないし。
もう、忘れたよ。たぶん。
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