わくわくお出かけなのですっ!

 何度も確認した。今日の日付に“矢萩ちゃんと遊ぶ”と書いてあるのを。そして今、午後1時。ショッピングモール内の映画館の前で待っている私は、1人の女の子が近づいてくるのを確認した。


「矢萩ちゃぁん!」


ぱたぱたと手をふると、白いワンピースで清楚にまとめた矢萩ちゃ…………


「え、かわいい…………!」


私の目の前にいたのは、いつもの矢萩ちゃんではなかった。


「ごめーん、待ったぁ?」


学校ではおさげにしている髪をポニテにし、メガネをとってコンタクトが入っている。丈の短い白いワンピースの下からは真っ白の生足がのぞく。そこにカーキのショルダーバッグという、可愛らしい爽やかな明るい印象を与えるその格好は、ジーパンに黄色のTシャツという私の格好とは全くちがう。私は髪型はいつもと変えてないし、カバンはふつうの白いリュック。矢萩ちゃん、こ、こんなおしゃれさんなんだ………!


「ん?どうかした??」


「あ、や別に………。可愛い、ね。印象変わった。」


そう私が呟くと、顔をほんのり赤くして、笑顔で答えてくれた。


「えへ、久しぶりに遊べるから、頑張っちゃった♥」


チクッ。なぜか、心が少し痛んだ。なんでだろう…………?


「んじゃ、行こっか。」


彼女に声をかけられ、首を傾げながら、暗い館内に足並み揃えて入っていった。








 ずびっずびっ。


「う、うぅー…………。うぁ。」


「もう、なんで、晴海ちゃんそんなに泣いてるのぉ。いつもそんなんじゃないじゃんー!」


私は、映画に感動しすぎて号泣してしまった。それを少し矢萩ちゃんに笑われているが、彼女も目を潤ませていた。


 私たちが観てきた映画は、“それは愛か、それとも嘘か。”という映画。愛し合っていた2人の関係が変わっていくのがなんとも切なくて、でもいとおしかった。


 私はこういう物語に弱いのである。本を読んでてもよく泣くくらいである。


「うっ、うっ。」


「そろそろ、泣き止んだ?」


「ん、もう、大丈夫。」


映画館内のベンチに座り、涙を止めたところで、少し目が重いのに気づいた。


「う、目、腫れてる…………、大丈夫かな?」


「そんな気になんないよ、大丈夫。それより、私ショッピングモール回りたいんだけど、いい?」


「うん、行こ?」


「やっぱ、女子はショッピングだよね!行こ!」


私たちは、映画館の外へ走り出した。

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