ちっさいおじさん召喚士

ReLieRu

第1話 小春日和

満席のバスの中、親子連れや、お爺さんお婆さん、学生服の生徒たち。今日も座れなかった。僕は晴峰斗真、大学生だ。理学部に入ったもののなかなか将来の道を絞ることができず、あれもやりたい、これもやりたいと、忙しい毎日である。実を言うと、最近睡眠不足である。正直なことを言えば、今にも後ろか前にぶっ倒れたりつんのめったりしそうな状態で、た、い、へ、ん、なのである。ふと、窓側の僕より二列くらい前の女の子が泣き出した。窓の向こうには屋台が立ち並ぶ地区の入り口がちょうど通り過ぎるころだった。反射神経も何も、窓側すら見てない寝そうな大学生は、なんで泣いているのかを把握することはできなかった。女の子を、母親が慰めているのを見ながら、女の子のないた訳に耳を傾けてみる。どうやら、屋台の並ぶ中に地区のゆるキャラの着ぐるみがたっていて、会いたかったらしい。車内の立ち客は先の停車場でだいぶん減って、昇降口まで見えるようになったところに、不審者らしからぬ人がいた。それはスマートフォンを表裏逆にひっくり返し、何かの画面をなるほど女の子のほうへ向けつつ、にこにこした表情をしていたおっさんであった。非常に怪しい、怪しい以外に何があろう、不気味?不審者?ろり?いやはや、そうかもしれないが、よくわからない。

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