7話

 アルスは父のファータを自分の護衛に入れた事で、計画していた魔力の成長ミッションを何ら邪魔も無く終わらせる事が出来た。

 魔法とはアルスの生きる世界では理解し得ない超常的な力を意味し、魔力とは魔法を発動させる為の動力源、又はその威力を示す事をこのミッションを終わらせてアルスは理解した。

 さて理解はしたは良いものの、このまま更に魔力を成長させるべきか? と問われればアルスはそれを拒否する。


 魔力の成長に魔法の強化は、この先の力にどんな変化をもたらすのか。とても魅力はあるが、それはアルスの身体能力に直接的な影響を与えることでは無い。

 あくまでも"あり得ない力"を成長させているだけに過ぎないのだ。

 それも魔法は当然だが、威力が高すぎて模擬戦などの人間相手には到底使う事は出来ない。現在のアルスの目標は次回の模擬戦を勝ち進むことであり、夢のような力を成長させている暇は無い。


 そんなアルスの目標を達成するために必要な物はスタミナだ。スタミナはステータスにどんなに眼を凝らしてもそんな項目は無く、今までに体力や筋力を上げまくったアルスでもスタミナが上がっているという自覚は無い。

 暫く間ステータスの力に頼っていたアルスだが、ここで壁とも言えない壁にぶつかる。『スタミナ』はステータスでは強化出来ないと。

 ではどうしたらスタミナを上げられるのか? それは単純にスタミナ作りをするしか無いのだ。


「スタミナ作りか……なら走れば良いのかな? 走る項目なら敏捷成長ミッションがあるけど……」


 今までにアルスがやってきた訓練とは殆どが剣の素振りで、いざ身体作りとなると具体的になにをすれば良いのかが分からない。

 ただ単純にスタミナ作りと言うのなら、一番に思いつくのは"走る"ことだった。

 そして走るならば、ステータスにある敏捷成長ミッションが並行して出来るので、スタミナが上がって敏捷も上がる。一石二鳥だと考えた。


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ー敏捷成長ミッションⅡー


20km走る(00/20)

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 敏捷成長ミッションは、ただ走るだけで達成できる。これなら王国の郊外を適当に走るだけで達成ができるだろう。

 今はファータとの魔物狩りが終わり、空は夕焼けだが、今から行っても遅くは無い。20km程度なら、深夜前に帰って来られる。そう考えてアルスは早速行動に出た。


 あくまでも走るのは王国内部の街を周回するつもりなので、魔物に出会うことはまず無い。危険は無いので鎧を外して動きやすいインナーと私服のズボン、革のブーツを履いてアルスは騎士団本部から郊外に向けて走り出した。


 走り出すとアルスは気付いたことがあった。アルスにとっては軽くジョギングのつもりで走っているつもりなのだが、やけに景色が流れていくのが早い。これもステータスの敏捷の影響なのだろうと。

 魔物と戦っている間も同じ感覚で、相手の背後に回ろうと考えれば、気付いたら既に背後に回っていたなどざらにあった。

 攻撃の回避もまた、相手の動きが遅く見える等々。


 ステータスの敏捷については自覚はしているものの、身体も追いついているが、反応が完全に遅れている。

 このまま敏捷を上げても良いのだろうか? いつかスピードを制御出来なくなったら? そんなことをアルスは走りながら考えていた。


 走っている最中のスタミナの減り方も、速度に比例して減るのではなく、本来のスタミナで最大で走れる距離に敏捷が速度で距離をプラスしているだけに過ぎないのだ。


 そうして時間は午後十一時五十分。アルスは深夜になる前にミッションを終わらせた。

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-敏捷成長ミッションⅡ-


・20km走る 達成


達成報酬:

敏捷+10

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「はぁ……っ! はぁ……!」


 スタミナの限界を超える為に走ったアルス。ミッションを終えた頃には息切れも激しく、騎士団本部まで戻ると地面に仰向けで倒れる。


 スタミナに関してはステータスと繋がっていないので伸びているのか正直分からない。

 ステータスが見えるようになってからは身体能力が急成長するようになったが、その前までは毎日訓練漬けだったのだ。なのにスタミナが全く無い。


 だからステータスと関わりの無いスタミナは今後も成長する事はあるのだろうか?


「疑問を持つな。このステータスはきっと神様からのプレゼントなんだ。兎に角信じて、ひたすら走れば、何かが起きるかも知れない!」


 ただ信じよ。自分を信じて、ステータスを信じろ。アルスはそう心に決めると、息を整えて、騎士団本部の中へ。自分の部屋に戻ると、すぐに眠りについた。


 翌日の朝、目を覚ましたら直ぐにステータスのデイリーミッションを行い、ランダムで成長を獲得する。


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デイリーミッション 達成


達成報酬:

・体力+1

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 次の模擬戦の為にまた王国郊外を走り、終わったら自室に戻って朝昼晩、食堂でご飯を食べたら筋トレと素振り。

 アルスはそれを毎日欠かさず、一ヶ月間行った。


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-敏捷成長ミッションⅢ-


30km走る 達成


敏捷+10


-敏捷成長ミッションⅣ-


40km走る 達成


敏捷+10


-敏捷成長ミッションⅤ-


50km走る 達成


敏捷+10


-敏捷成長ミッションⅩ-


100km走る 達成


敏捷+10

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おめでとうございます。全ての敏捷成長ミッションを完了しました。


コンプリート報酬:

・全ステータス+10

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-特殊条件達成-

以下の条件を達成した事で能力が強化されました。


・累計2000km走る 達成


達成報酬:

・隠しステータス解放

・スキル獲得

-第二ステータス-

 St:Lv1

 Ta:Lv1

 Gr:Lv1

スキル《限界を超えし者》

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-特殊条件達成-

以下の条件を達した事で新たな項目が追加されます。


・三十日間デイリーミッションを全てこなす。


達成報酬:

・デイリーミッションの廃止

・マンスリーミッションの追加

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 筋トレして、走って、デイリーミッションをこなして……これだけで驚くべき変化があった。


 まず、敏捷成長ミッションの全完了による全ステータス+10上昇。

 次に、スタミナ作り為にミッション完了後も毎日100km走った事で累計走行距離が2000kmを達し、特殊条件の達成。隠しステータスとスキルを獲得した。

 更に、一ヶ月間毎日欠かさずデイリーミッションをこなした事で、デイリーがマンスリーにアップグレード。

 そして、一ヶ月間の訓練を経て、総合ステータスが劇的に成長した。


 ただその中で最も気になる点と言えば、『隠しステータスの解放』だろう。

 St、Ta、Grと、二つの文字で記されており、恐らく何らかの言葉を略しているのだろうとアルスは隠しステータスに目を凝らすが、特に説明は表示されなかった。

 意味が理解出来ない上に想像も出来ない。アルスは一先ずこれに関しては、後回しにする。


 次に新しく獲得したスキルだ。


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 《限界を超えし者》Lv1

 ある一定の限界を超えた者に贈られるスキル。何の限界を超えたのか。個別でステータスに補正値が加算される。

 またこのスキルは項目を達成する度にステータスが永久的に底上げされ、この数値はデバフによって下回らない。

現在の限界突破項目:

・敏捷+2

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 効果は至極単純。何が限界突破項目になっているのかは分からないが、アルスのなんらかの行動に関わっているのだろう。

 そのステータスが指定した限界を超える事でステータスの能力値が永久的に底上げされるという。

 デバフについては、よく分からない。


 こうして一気に成長を遂げたアルスは自信を満々にして翌日の模擬戦に準備をする。どれだけスタミナが付き、今のステータスがどれだけ通用するのか。

 ステータスが見える様になってからの最初の時のようにアルスは心を躍らせる。


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 -ステータス-

 名前:アルス

 Lv:2


 体力:76(+5)

 筋力:79(+5)

 魔力:63(+5)

 敏捷:138(+7)

※( )は、スキル発動時の上昇値


-第二ステータス-

 St:Lv1

 Ta:Lv1

 Gr:Lv1

 


 魔法:

 ・焔の剣Lv2


 スキル:

 《諦めない心》Lv1

 《訓練補助》Lv1

 《勇者の闘志》Lv1

 《限界を超えし者》Lv1

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