第4話 異世界での通貨は元の世界とあまり変わらなかった

「ここが香草屋ね。このお店では世界中の香草を取り扱ってるから、種類も豊富なんだよ?」

「な、なるほど……」


この世界の通貨を知る為にブラドさんから買い物を頼まれ、リディに村を案内されながら彼女の説明を聞く僕。


「えーっと……これとこれを1束ずつください」

「はいよ。全部で、300になるぜ」

「それじゃあ、500ラルドでお願いします」

「はいよ。200ラルドのお釣りだ」


店員のお兄さんからお釣りを受け取る。この世界での通貨名は『ラルド』と言うらしい。


驚いたのは、ウィルホールでも札束が存在していた事だった。

店員のお兄さん曰く、なんでも10年前からウィルホール全土で施行されたそうで、商人達も最初は戸惑ったものの、凄く効率的な通貨で商売もかなり楽になったとの事。


通貨名が元の世界と違うだけで、他の部分は元の世界と一緒だった。


例えば元の世界で1円って数え方なら、ウィルホールでは1ラルドって感じか。……というか、通貨名が違うだけで本当に助かったよ。


「…それにしてもあのお店、リディが言ってた通り、香草の種類が豊富だったね? 何か名物の料理ってあるの?」

「えーっと……香草焼きかな? あと香草を使ったパンとかクリームシチュー」

「僕が訊いておいてなんだけど、どれも味付けが難しい料理ばかりだね……」

「えっ? そうかな?」


首を傾げるリディ。

僕が知ってる料理の中でも味付け難易度が最上位ものばかりだった。しかもこの村では、使う香草や味付けは家庭によって違うと教えてくれた。


「少なくとも僕はそう思うかな。僕もその料理は作った事があるからさ。特にクリームシチューは難しくて……」

「えっ!? ツバメって、料理できるの!?」

「さ、最低限の料理しかできないけどね? 本格的な料理とかは作るやつによるけど……」


目をキラキラと輝かせながら詰め寄ってくるリディに焦りながら質問に答える僕。


「そ、そういえば、この世界での食材調達とかってどうなってるの? さっきみたいにお店で買えたりがほとんどとか?」

「それもあるけど、魔物モンスターを討伐して食材を手に入れてる所もあるんだよ? この世界での人にとっては当たり前になっちゃってるけどね」


この村は特に肉が貴重なんだよーと付け足すリディ。

確かに村の色んな店を一緒に回ったが、精肉店らしきお店では、安い値段の肉もあれば、時価の肉もあった。


ちなみにその精肉店の店員さんに訊いたところ……


『うちで扱ってる肉は月によって値段が変動するんだ。もし気になる肉類を見つけたら気軽に声をかけてくれ。こう見えても俺は目利きは得意なんだぞ?』


茶目っ気ある感じに言われた。

ほんとにこの村のエルフの住人達は優しいし、親切である。


「この村に来た時から気になってたんだけど、あの目立ってる木製の看板みたいなのって何?」

「あー……あれ? だよ」

「クエストって……誰かから依頼されたやつを受けて、報酬を貰うっていう……あの?」

「そうだよ。せっかくだから、ツバメも見てみなよ?」


そう言われた僕は興味本位でクエストボードの前で足を止めた。

よく見ると、様々な依頼の紙がボードに貼られているではないか。仮に受けるとしたら、どうやって受けるのだろう……?


「クエストを受ける時は、ここに居座っているにお願いするんだけど、今日は受付に妖精が居ないから、クエストは受けれないみたい」


僕が疑問に思っていた事が顔に出ていたのか、リディが説明してくれた。


「そうなんだ? 僕てっきり、この村の人達の誰かが受付をしてるのかと思ってた」

「最初は私も村のみんなの誰かがやってるんじゃないかなーって思ってたんだけど、妖精が受付をやってるってお爺ちゃんから聞いた時はびっくりしちゃった」


クスクスと笑いながら話すリディ。


「…明日もクエストボード、見に来ようかな?」

「それもいいと思うけど、今は頼まれた買い物が先だよ? 他にも色々あるんだから」

「それは確かに同感。次はえっと……名前からして魚……でいいのかな?」

「どれどれ? えっと……あ! ツバメ、これを取り扱ってるお店はこっちだよ」


異世界での買い物に早く慣れる為、僕はリディに案内されるがまま次のお店に向かうのであった。

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異世界に転生転移召喚? 何それ知らないけど? ゆるポメラ @yurupomera

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