第34話「十傑選定戦に向けて1」

第34話


「さて、それじゃあもう帰ってもいいよ。他の十傑メンバーには僕らから言っておくから。じゃあねシンモン君。」


そう十傑第四席のロイさんが言う。


「はぁ、今度はもう十傑選定戦かもしれませんけどね。(まぁ監視はついているんだけどね。)それじゃあ俺を早く帰してください。」


「うん、そうだね。それじゃあ君はまだ十傑じゃないから…………ロイ、よろしくね。」


ミナト エイシがそう言ったあと、


「それじゃあね♪また会おうねワンコ君♪」

「じゃあなソラ!!今度戦おう!!」


リンさんとダルクさんがそう言った。何だこれからなんかされんのか?


「うっ……。何…だ……意識が薄れてく。」


これは物理的に気絶させられた訳じゃないな。魔法か………これも………。


***


「………いじょうぶ……大丈夫か!?ソラ」


なんか声が聞こえる。これは、エミリアか?


「うっ……んっ、なんだまた知らない天井だな。」


僕は寝かされていたのだが、目に一番に入った天井を見てお決まりなセリフを言った。それとどうやらここは保健室らしいな。


「おう……エミリア、俺は大丈夫だ。エミリアたちこそ大丈夫か?」


俺がそう言うと、エミリアは涙を流し始めた。


「どっ、どうしたエミリア!?本当に大丈夫なのか?」


「大丈夫だ……大丈夫に決まってる。でもソラのせいではないか。どれだけ心配したか……十傑に連れて行かれて、刀まで抜かれていて………ソラが十傑のこと舐めすぎて殺されるのかと思った。」


そう言ってエミリアはベッドの上で座っている俺に寄りかかってきた。そうかエミリアは心配してくれたのか。俺もエミリアとかを友達を大切にしないとな。


でもまて、別に十傑を舐めてるつもりなんて無かったんだが………。


「ありがとう、エミリア。」


そう言うと俺はエミリアの肩を抱き寄せた。一瞬エミリアはビクッとしたが、すぐにエミリアも俺を抱きしめて俺の胸の中で少しの間泣いていた。勘違いするなよ、これは安心させるためだ。………やましい気持ちなど……ない。

まぁその後エミリアが顔を上げたのだが顔と顔が至近距離で向かい合って二人とも赤くなったのは言うまでもない。


「見せつけてくれるね、ソラと姉さん。起きてすぐにそれか、心配して損したな。まぁ十傑がソラを殺すなんてことないって知ってたけどね。」


「お、おぉアーサー、か。」


なにニヤニヤしてやがんだ。相変わらずだな、さっきぶりだけどさ。


「アーサー、聞きたいことがある。」


俺はそう言ってエミリアと離れる。エミリアは「あっ……」と言っていたが、今はそれよりも十傑についてだ。


「エミリア、一度先に教室に戻っていてくれるか?アーサーと話があるんだ。」


「だ、だが私も何か力になれるかもしれないだろ………。」


エミリアは本当に優しいな。だが今はアーサーと話すべきことがある。


「姉さん、ソラの頼みを聞いてやってくれ。」

「頼む、エミリア。」


俺とアーサーは真剣にエミリアにそう言った。すると、エミリアは「分かった。」と言って保健室を先に出て行った。


***


「それで、ソラ知りたいことってのは?十傑のことか?」


エミリアが出て行ってから俺とアーサーは早速話し合っていた。


「うん、俺はこのままの通りにミナト エイシに挑むつもりだけど、やっぱり情報が少なすぎる。そこでアーサーにはミナト エイシのことや、十傑の仕組みとかについて詳しく教えてほしいんだ。」


「………分かった、ソラの要望通り僕の知っていることは全部話してあげる。だけど、その代わりになにがあったか教えてくれ。」


アーサーにそう言われ、俺はアーサーに時間が止められ、連れて行かれてからのことを話した。


十傑メンバーのこと。

監視がつくこと。

選定戦は普通にミナト エイシに挑んでいいこと。


「ふむ、そうか。それでソラが運ばれてきた時も気絶していたと言うわけか。分かった、それならこれから作戦を考える訳だな。でもそれなら、僕いるか?」


「勿論だ、なんせ俺は戦いの経験も少ないし何よりミナト エイシの時間を操る魔法に対抗できていない。だから頼む。」


俺はそう言って改めてアーサーに頼んだ。俺がそう言うとアーサーは頷いてこう言った。


「分かった協力は勿論するよ。だけどなるほどね、だから姉さんを部屋から出したのか。」


そう言ってアーサーは俺の目の奥を、瞳の奥を見るようにしてきた。


「はぁ……そうだ十傑選定戦はいくら学園の行事とはいえ、両者が本気で戦うものだ。だから俺が死ぬ可能性だってゼロじゃない。それに相手は一番強い第一席だ。だからもしここにエミリアがいたままだと、とても心配させちゃうだろ。……俺たち友達だしさ。」


実は十傑選定戦はどちらもかなりの実力者どうして争われるので、かなりの傷を受けることや最悪命に関わることだってあるのだ。


「まぁソラのその意見には賛成だね。なんせ姉さんはソラに惚れちゃってるもんねぇ。」


そう言ってアーサーは俺に悪戯な顔を向ける。


「はぁ、そんなこと冗談でも言ってやるな。それよりも早く十傑攻略の話をするぞ。」


全く、早めにアーサーのことは締めておかないとな。


「(……全然冗談なんかじゃないけど。)……分かった、十傑攻略の話を早速始めようか。」


そう言ってやっとアーサーと俺とで十傑と十傑選定戦の話が始まった。

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