第5話「俺の初期ステってどうなん」

第5話


「さてと、まず君の名前は?」


さっきの出来事の後、俺はギルド長のレイスさんにギルド長室に呼び出されていた。


「えっと新門 宇宙と申します。」


「ほぉ聞かない名だな。東方の方にそのような名を使う国があった気がしたが、その方の出身か?」


へぇ東方にそんな日本みたいな土地というか地域があるんだな。いつか行ってみたいな。

俺は一瞬正直にいうか迷ったが、念のため今は辻褄を合わせて話すのが良さそうだな。この世界での転生者の扱いが分からない以上そうした方が良さそうだし。


「えーっと、まぁはいそんなところです。」


「まぁいい。そこらへんの詮索はやめておこう。それにしても其方はかなりの強者であるのだな。かなりの鍛錬を積んだのだろう。ちなみにだが其方は冒険者協会に入るつもりなのか?」


「はい、そのつもりです。実はここにはつい昨日来たばかりで職と情報も欲しいですし、鍛錬ももっと積みたいですし。あ、あと名前はソラでいいですよ。」


「分かった。ソラ、冒険者協会に入ってくれるなら勿論歓迎する。さて、早速だが私は其方に興味がある。勿論嫌なら答えなくとも良いが、ソラは今どのくらい魔法を使えるんだ?身体能力が高いのは分かったが。」


「えーっと………実は俺には使える魔法の属性がないんです。」


俺がそう言うと、レイスさんは目を見開いて驚いていた。何かまずかったり、変なのだろうか?


「あ、でも何か特殊魔法というのがあって、熱魔法というのが使えます。まだあまり試していないのであれですが、熱魔法の一つはさっきのベルリオンとやらを吹き飛ばした時の身体強化がそうです。まぁ今のところ特に使用制限とかが無さそうなのでかなり汎用性は高いと思います。」


「ふむ、そうか分かった。あとソラが私のことを信頼してくれているのも分かった、ありがとう。」


どうやらレイスさんは俺のことを歓迎してくれるらしい。やはりこちらの情報を与えて正解だったな。人はどんな時でも不安を抱えて生きてしまう生き物だから、信頼することのできる人に出会うことができて本当に良かった。


「これから、お世話になります。」


***


「さて、これから正式にソラが私たち冒険者協会の仲間に加わることとなる訳だが、その前にまず水晶で能力を測った後、指定されたランクに割り振ろうと思う。別に人払いをして、情報管理は徹底させるから遠慮なく全力でやってくれ。」


この後も俺は少しレイスさんの話を聞いた。

まず分かったことは、ランクはF〜Aその上にS→Lと分かれているらしい。なんでも最高ランクのLレジェンドは世界にまだ1人しか存在していなく、特例的に与えられた称号のようなものらしい。

また最初は原則、水晶で判断できる魔力などの総合能力によってF〜Dの間に割り振られるらしい。

ちなみに理由としては、どんなに能力が高くても依頼を達成できなかったり、人間関係が最悪だったりするような奴らを高ランクにして変に秩序を乱すことを避けるためらしい。うむ、実に合理的だ。

それと、俺に遠慮なくというか自重とかをしないで欲しい理由としては、最近の魔物の活動が激化していて戦力把握をちゃんとしておきたいからだそうだ。


「さぁそれじゃ早速測ってもらうとするか。エレナ入ってくれ。」


レイスさんが言うと、ギルド長室にピンク色の髪のエルフっぽい娘が入ってきた。

なんか、この世界で会う人みんな可愛いかったり美しいかったりする人ばっかなんだけど。まぁ悪い気しない………眼福だから全然いい嬉しいけどさ。


「エレナ、ソラを連れて行ってくれ。それで水晶で能力を測って、もう一度私のところに連れてきてくれ。」


「はい!」


どうやら元気な女性らしい。俺もレイスさんに言われた通り、ギルド長室を出て先程の受付へと向かう。


「それでは、この水晶に手を触れて下さい。えっとその時、身体強化とかは使わないで下さい。」


そうか熱強化は使えないのか。


「あ、でも大丈夫ですよ。魔法とかはポテンシャルとかも十分ランク決めには左右されますので。」


そうか、俺の魔法は熱魔法だから、多分特殊魔法というだけあってランク決めに考慮はしてもらえるだろう。


「あ、あのギルマスが言った通り、個人情報管理は徹底していますので。」


と俺が言葉を返さず、考え事をしていると、あたふたしだした。なんだ?この娘は?俺が困っていると思ったのかな?何だか可愛いなw


「あの大丈夫ですよ。俺はギルドを信頼していますので。」


そういうとビクッとエレナさんはした。


「それはよかったです。安心しました。それでは早速この水晶に手を触れて下さい。」


どうやら安心してくれたようだ。

早速、俺は水晶に手を触れた。


「何だ?金色?」


何か水晶が金色に光ったぞ。それにどんどん光が明るくなってくけど大丈夫なのかこれ?気のせいか熱くもなってきたし。


"バキ ‼︎ バキバキバキ!!"


「っておい、割れたけど!大丈夫なのこれ!?」


「だ、だだ大丈夫ですか!?」


とまたもやエレナさんがあたふたしている。

俺もエレナさんも大丈夫なのか!?とあたふたとしていると、さっき来たギルド長室の方からレイスさんが俺たちの方に向かってきた。


「全く、会った時から魔力が強いだろうなと何となく踏んでいたが、まさか水晶が金色に光り割れるほどとは、しかも何だ水晶が溶けかかっているではないか。」


「はぁーソラ、其方は私と一緒に来い。エレナ、エレナは水晶を片付けておいてくれるか?」


「は、はい!」


「ソラもいいな。」


「はい。」


半ば強制的に俺はレイスさんにギルド室へと連れていかれた。やはりあの水晶はかなり高価なものだったのだろうか?あぁー不安だ。


***


「さてと、ソラ。悪いがステータスを教えてくれないか?勿論こちらは情報を絶対に漏らさないということしか保証できないが…………」


俺はギルド長室に連行されてから、レイスさんと話していた。

レイスさん曰く、どうやら水晶は称号や特殊魔法などの固有のものなどを全て見ることができるものではなく、分かる部分としては魔力量と攻撃力・防御力・体力などから導き出した総合値で、それを色などで表すらしい。

まぁ俺も信頼をちゃんと得るんだったらステータスくらいは教えてもいいか。レイスさんはギルドマスター、ギルマスだし。


「分かりました、ステータスを教えます。でもレイスさんまででの情報ストップをお願いできますか?」


「うむ、それは勿論だ。そうだなぁ…ソラが私に情報を渡すなら。私もそれなりのことをしよう。そうだなぁ………あ、そうだあれをやろう。」


レイスさんそう言って、何かを思いついたと思ったら、今度は何かを取りに行った。どうやら情報の対価として、何かをくれるらしい。


そして少し経ってレイスさんが奥の部屋から戻ってきた。


「これなんてどうだ?」


「これは?」


「うむ、これは魔道具の一種でな。この魔道具は"灼熱の魔眼"といって見た通り指輪だ。それで肝心の効果が、特定の特殊魔法の威力を最大10倍まで引き上げるというものだ。まぁただしこれは使用者の魔力量によって効果はかなり変わるし、特定の特殊魔法が何か分かっていない以上ソラにも使いこなせるかは分からない。だがまぁこれが魔道具の中の最上位クラスのレジェンダリー秘宝であることは確かだ。…………どうだ、これではダメだろうか?」


「……でもこれだけの魔道具、かなり高価じゃないんですか?それに、何で僕なんかに。それこそ、名前的に炎系統っぽいし、Sランク帯の炎魔術師とかにあげた方がいいのではないですか?」


勿論欲しいには欲しいが、これはあくまで俺の本心だ。


「うーむ、何でと言われると今まで私の仲間にこれを使える魔法使いがいなかったというのが理由だ。この魔道具の効果は絶大で魅力的だが炎魔法は特殊じゃないし、なにより特定の特殊魔法というのが厄介だったからな。それにあとは単純に私の勘だな。何故かは分からないが、私にはソラがかなり強くなるという明確なビジョンのようなものが見える気がするんだ。」


「…………分かりました。それならまず、僕のステータスについて話します。」


そういうと、レイスさんはゴクリと固唾を飲み込みこちらの話に集中した。


「まず、僕の基礎ステータスというか攻撃・防御・体力の数値は全く鍛えたりしていない今の状態で全部3000です。それでここからが多分異常です。えーっと、言いにくいのですが魔力が無限で知力に至っては計測不能です。」


「……………ふーむ、私が思っていたよりもかなりの数値、というより最早異常だな。……えーっとだな、まず基礎ステータスの攻撃・防御・体力3000らしいが、それで本当に何にも鍛えていないんだな?」


そう聞かれて俺は頷く。


「えーっとなステータスは基本的には水晶か神殿とかの特殊施設や道具でしか見れないのは知っているだろうが、騎士団の一般兵の攻撃力が大体1200〜1500くらいだ。それに防御力に関しては600〜700くらいだったはずだ。一番個人差が大きい体力ですら1500〜2500くらいだったはずだ。つまりソラは全く鍛えていない状態でも、かなりの力を有しているということだ。」


なるほどそうだったのか。だからベルリオンと戦う前から体が軽いような気がしたりとかしたのか。

まぁ俺はいわゆるレベル1みたいな状態でも一般兵よりも全然強い力を有しているということで。あと俺が常にステータスを見ることができるのは転生者の特権なんだな。それに、それならベルリオンとやらはかなり強かったと認識されていても不思議じゃないのかもな。


「それにだな、ソラ。魔力が無限なんて、かなりやばいこと、いややばいどころの話ではないんだぞ。それこそ世界がひっくり返るほどにな。理由は言わんでも分かるだろうが、戦いにおいて魔法は勝敗や生死などを大きく左右する要因の一つだ。そしてその魔法は術師の持つ魔力の量によって威力も撃てる量も大きく変わる。その魔力量が無限だなんて……

ま、まぁ次だ。知力が計測不能っていうのはどういうことなんだ?まずそもそもソラは知力が何を左右するのかは知っているか?」


うん、勿論知るわけがない。あと魔力量だけでも俺がかなりヤバいってことが分かった。


「いや、知らないです。」


「…………はぁ、そうか。えーっとだな知力はおおかた魔法、物理含み応用力、効率を大きく左右する要因となるものだ。ちなみに知力の値は、なの通りに一般的に本人の知識や頭脳によって変化する。そんな値が計測不能ってソラは何者なんだ?味方だと分かってはいるつもりだが、なんだが少し怖くなってきたぞ。」


レイスさんはそう言うと、一息ついた。

うーん、それにしてもやっぱり転生者はみんなチートみたいな感じなのかもな。いつかのセリフを撤回しなくちゃな。


「うーん、そう言われるとなんだか自分でも自分が怖くなってきますね。でも安心してください。少なくとも敵なんてことはありません。いや、むしろ味方なつもりです。」


「それについては信頼しているわ。でもそうしたらどのランクに割り振ればいいのかな。うーん、どうしたもんかなぁ。そうだなぁ特例としてCランクスタートにするか。Bランクのベルリオンも倒していることだし。それでいいかなソラ?」


「えーっと、でもいいんですか?」


「ああ、申請とかは私がやっておくから安心してくれ。それじゃ改めて、これからよろしくソラ。」


「はい、お世話になります。」


そう言ってひとまずレイスさんとの会話は終わり、俺はギルドを出た。


***


そうしてギルドを出ると、もうすでに日が暮れかかっていた。だから俺は早足で銀の帽子亭へと帰ることにした。

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