第11話

 偶然。

 捉え方ひとつ。

 必然とも、たまたまとも。

 認識次第で印象は変わる。

 主観なら好きなように考えればいいのに。


「何してんだ? こんなところで」

 一人の男性が二人に声をかけた。

「あっ、どうも」

「おう。こりゃどっかで見た顔だな。で、何してんだ?」

 偶然にも話しかけてきたのは、昼間叱ってきた男性だった。

「実は……」

 女性はことの成り行きを男性に説明した。

「そうか、なるほどなぁ。にいちゃんの方が危なっかしいと思ったが、なるほどなるほど。じゃ、うち来いよ」

「いいんですか?」

「もちろんだとも。あんたらが気にしないならな」

 男性は夜の暗さでもわかるほど大きく笑った。

「気にしませんよね?」

 どこか有無を言わせない雰囲気を感じた彼は、静かにこくこくと頷いた。

「決まりだな」

 男性が満足そうに言うとそのまま歩き出した。

 慌てて女性が追いかけるとその後を彼が歩き出した。

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