年末の半年前のこと

「のと、本当にするのか?」

「うん、よろしくね。ゆげちゃん、ながちゃん」

【のとじま】と【すがしま】の部屋で脚立に上り、天井板を押し上げたところで振り返れば肩章を外した能仁はいたずらそうな顔で笑って言う。

「これ、こんなとこ置いていいのかー?」

天井裏に自分の分身と言っても過言でない木箱を置こうというのだ。普通の【艦霊ふなだま】ならばまず首を縦にはふらないだろう。そして、俺たちに設置させるのは、きっと文字通り墓まで持っていけということなのだろう。

「できるだけ、菅仁すがひとがびっくりするとこに置きたいから」

「なんというか愛が重いなー」

「そんなことないよ」

驚く菅仁の顔を思い浮かべているのか終始ニヤニヤしている能仁のりひとのリクエストに応えて天井板を元に戻せば、能仁の懐から今度は幾つもの封筒が出てきた。

「あと、これは本棚の裏に隠して、こっちのは机の裏に貼りつけて……」

「何個あるんだよ!」

「いっぱい」

「全部見つけられるのか?菅仁だぞ?」

「全部見つけられなくてもいいんだよ。【すがしま】が除籍するまでちょっとずつでも俺の欠片が傍にいればいいから」

能仁はなんでもないことのようにそう言って俺たちに指示を出す。

「重いよー」


さて、残り約二年。菅仁はどれだけ見つけられるだろうか。

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