とある神の憂鬱

elles

 ……俺を呼んだのは、あんたたちか?


もしそうなら、はじめに言っとくことがある。

 

 俺は勇者でもなんでもない。この世界の神だプログラマーだ。

 なんでが来たのかって? 

 俺が聞きたいよ。


 そもそもな? 世界ってゆーのはBIOSなんだよ。

 その基盤ソースが出来て、世界と登場人物が存在できているのさ。

 物語にはまずキャラクターありきってのは実に的を射ている言葉だな。


 で。


 その理屈で登場人物PCは舞台を求める。

  この世界では勇者を必要としたからあんたらは召喚ダウンロードした。


 簡単な例を言うと、あれだ。

 推理小説には探偵がつきものだろ?

 もし、探偵がいなかったらその世界はどーなると思う?

 推理小説の世界なのに、事件が起きない。

 そんな事になると、世界全体の存在意義がなくなっちまうからな。

 

 あん?

 じゃああんたはなんで召喚されたのかって?

 さっきも言ったけど、俺のほうが聞きたいよ。


 敷いて理由をあげるとすれば、調整スケジュールに問題があったんだろうな。

 

 

 何しろ、その世界観に似合った勇者キャラを用意しなきゃなんねぇ。

 しかし、いろいろな設定の調整が間に合わなかったんだろう。

 俺が一生懸命それをやってる間に、あんた達が勇者を召喚しちまったんだな。

 その結果、俺が登場するハメになった。

 

 だから、ちょっと時間をくれや。

 とっとと修正デバッグをするからよ。

 よし、終わった。

 ポチッとなって……

 あ。


 




 ・

 ・

 ・


 


 

 俺が手を滑らせてしまった結果、世界がまるごと消滅デリートされた。


 その後――。

 案の定、俺は上級神じょうしにこっぴどく怒られ、世界を一から作り直す

 羽目になった。


 どうやら、修復には7日間ほど掛かりそうだ……。




                                 お粗末!

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