VRchatにおけるお砂糖という文化について

SugiyaMaru

この文章はあくまで「異性愛者の同性間においてお砂糖関係が結ばれた場合」の関係性について個人的見解のみで妄想しておりますのでご了承ください。


 VRchatを始めた当初私が「お砂糖」という文化に抱いていた印象はあまり良いものではなかったが、現在においてはその認識を改めつつある。FF14に執心していた最中エターナルバンドをしていた奴が何を言うかという話ではあるが、メリットの点で言えばエタバンは限定アイテムの入手などが挙げられるが、お砂糖に関しては極論精神面での共依存しか存在しない。またそれは人によってはデメリットになりうる要素である。システムであるエタバンに対しお砂糖は文化でしかなく、それ故に新参者には理解しがたい。

 またプレイヤーの男女比率上仕方ないことではあるが、一部例外を除きお砂糖は基本的に男性同士で行われる。しかしお砂糖関係を結ぶ多くのプレイヤーがそれ以前からセクシャルマイノリティであるかどうかといえばその限りではない。「メス堕ち」という文言が示す通り彼らのほとんどは現実でも恋愛対象は女性、性自認は男性であろう。ではお砂糖が友愛の延長線上の文化かといえばまたそういうわけでもない。

 性愛と友愛を隔てるものはなんといっても性別である。一般的に見て双方が異性愛者且つ同性であるならば、友愛の延長線上に性愛は存在しえない。だがしかし双方が異性愛者かつ異性であったならばどうだろうか。「男女の友情が成立するか否か」という甘美且つ情緒的な話題に関しては個人の意見の分かれるところではあるが、これに関しては友愛の延長線上に性愛が存在する、あるいは存在しえるといっても差支えはないだろう。

 ここで話題をお砂糖に戻す。先にも述べた通りお砂糖関係を結んでいるのは多くの場合において双方が異性愛者且つ同性である。お砂糖を機に同性愛あるいは両性愛に目覚める者もいないとは言わないが、その少なくとも過半数は現実の趣向が変わることはないだろう。聞けば現実で妻帯者でありながら同性とお砂糖関係を結んでいる者もいるという。

 かといって彼らが最初からお砂糖目的で相手に接触しているかと言えば、多くはそうではないだろう。一プレイヤーとして仮想現実に降り立ち、きっかけは知らぬが知り合い、友人となり、そしてお砂糖関係を結ぶ。現実では異性間で発生する現象が同性間で発生している、つまりは異性愛同性間の友愛の延長線上に性愛が存在しているのである。

 しかしそもそもお砂糖を性愛と表現していいのだろうか、という疑問が残る。現実に目を移して考えてみると、これまた個人の意見の分かれるところではあるが、性愛とは基本的にヒトが種族として存続繁栄するための仕組み、子孫を残すための本能を理性が脚色した感情に過ぎない。しかし仮想現実においては種としての子孫を残すことは叶わない。故にお砂糖とは性愛と似た外形を持ちながら、性愛とは全く別の存在と言える。

 VRchatの仕様上従来のネットゲームに跋扈していたネカマプレイは難しく、ボイスチェンジャーを使おうが声帯を酷使し女声を出そうが所作を意識して女性的なものにしようが大体は気づかれる。しかし気づいた上で「お前男やろなんでそんなことしてんねん」とはならない。また美少女アバターから非常に男らしい声が出ていようが大股開きで安酒を呷っていようが「美少女のガワ使うんやったらもうちょいその辺意識せえや」ともならない。これこそがお砂糖という文化が根付く土壌なのである。つまり多くのプレイヤーにおいてリアルの性別は重要な問題ではないということである。アバターが可愛ければ所作が中年男性のそれでも、いやむしろ中年男性のそれだからこそ可愛く見えてしまうということすらあり得るし、アバターが可愛くて声も所作も可愛ければそれはもうただの「可愛い」である。しかし不思議なことにそれは男性としての異性愛という土台の上に成り立つ感覚なのである。

 思うにお砂糖とは同性愛と異性愛その両方に属すとも言えるし両方に属さないとも言える新しい関係性の在り方であるのでないか。仮に人間が肉体を離れ情報だけの存在になったとして、その性別は何を以て定義されるのか。個人的見解であるが、そこに性別は存在しない。性別とは種の繁栄における役割分担であり、肉体という器を増やすための手段である。SFあるいは哲学的な話になってしまったが、将来的に人間が肉体を捨て性別という概念がなくなることは大いに考えられる。そこでどう繁殖繁栄していくのか、ここでは大筋から逸れるため触れないが、お砂糖とは異性愛としての感性の上に成り立ちながらも性別に左右されない、特殊な関係である。これは思うに未来的に発生しうる性愛友愛に区分されない関係性の原始的な形ではないだろうか。


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