ソロソロ、ジカンヨー。

黒銘菓(クロメイカ/kuromeika)

第1話

 ソロソロ、オワリノジカンヨー。

 いやだいやだと必死に抵抗する。

 小さな手をパタパタとさせてその場で駄々をこねる。

 と言っても、子どものやる事だ。駄々っ子でこちらも折れる訳にはいかない。

 昨日はもの凄い勢いで興奮して寝てない様子だったし、もうそろそろ寝かしつけないといけない。

 確かに、楽しかっただろうけど、分かるけれども、それでも………だ。

 悪いことが有るから良い事は起きるし、物事は楽しい。

 ジェットコースター、観覧車、メリーゴーラウンド……………楽しい楽しい遊園地。

 だけど、それは終わりがあるからこそ楽しい。

 何時までも続く遊び、何時までも続く幼年期、何時までも続く楽しい青春の日、愛する人との不変にして永遠の日々……………。

 そんな日々、何が楽しいの?何が幸福だと?何が満たされるというのだろうか?

 遊びは終わるからそれ迄の間、全力で遊ぼうと足掻いて人間は遊び、楽しむ。


 幼年期、子どもであった日々は過去になる。だからこそ人は気付く。成長の偉大さを、広がる世界の大きさを、未知の楽しさを、既知の出来事が役立って学ぶ事の価値を知る。


 愛が不変で永遠。だとしたら悲しい事だ。

 愛は減らず、増える事も無い。何時までも変わらないものは永久の全盛ではなく、終わらない虚無。

 変わるからはぐくむ事が出来、刹那故に輝き、それを尊び、慈しみ、愛は愛足り得る。


 それが、この子には解らないらしい。

 永遠や終わらないことへの恐怖が無いらしい。

 まったく…………

 「ソロソロ、ジカンヨー。」

 斧を振り上げる。

 人外ワタシの膂力を以てしても中々これは骨が折れる。

 柄だけで2m。刃の部分がずっしりと重く、バランスが取りづらい。

 目の前の人間はバタバタを手足を動かすが、作業台に取り付けた手枷と足枷は決してそれを許さない。

 叫ぼうとしても、もう響かせる喉は無くなっている。

 「ヨイショ!」

 振り上げた斧を重さに任せて落とす。


 ポン!







 「オワリガナイノハツライ、ダカラ、オワラセテアゲタノー。」

 目の前の男の人はそう言ったのに、怒る事を止めない。

 両手の指の間に挟んだ釘が生き物の様に走り、私の手足を文字通り地面に打ち付ける。

 「終わりが無いのが辛い……か。

 そうかよ………そうかよ!

 解ったよ……………じゃぁ、終わらせてやるよ永遠に!」

 目の奥が燃えている。

 いっぱいのくぎ。

 いっぱいくる。

 まっくら。

 おわり?ううん、ちがうよ、わたしはおわらない。

 しんでもしんでもおわらない。わたしはずっといきつづけるの。

 しんでもしんでもおわらない。

 なぐられても、つぶされても、さされても、やかれても、とかされても、おなかがへってもしなないよ?


 だってすぐ、小さくなって、大きくなって、生き返る…否、生まれ変わるのだから。







 「ってのを作ろうかと思うんだが、如何だろうか?」

 『いや………意味解らんぞ。

 なんか、怖い。何この斧持ってた方…』

 「ここから、この転生して生き続けるある種不死の怪物と、そいつらを狩るハンターとの戦いが幕を開けるのだよ。」

 「……そいつ

 複数形?」

 「沢山出す予定。

 何世代にも渡って続くお話だから。」

 「DI○様よりも鬼舞○無惨よりも惨い話になりそうだな………。」

 「そうそう、生まれ変わる奴等は命の価値が解らなくなって、だから命を解る為に凶行を繰り返す。

 ある種あの二人より惨いよね………。」

 「………ったく、何だってこんな奴等を思い付けるんだ……お前は。」

 「え?だって、リアルに居るから。」

 「ん?」

 「お前の目の前に、その作品の怪物が居るんだよ。」

 「お前……その斧………それ!」





 ポン。




 ソロソロ、オワリノジカンヨー。

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ソロソロ、ジカンヨー。 黒銘菓(クロメイカ/kuromeika) @kuromeika

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