ソロプレイヤーの悩み

赤城ハル

第1話

 ソロプレイヤーは大変である。

 たった独りで難敵を倒さないといけないのだから。

 そのため、ソロプレイヤーはどんな状況にも器用に立ち回れるようにならないといけない。

 私はかつて攻撃力だけ上げてしまいボス戦で速攻でやられてしまった。雑魚は簡単さくさく進めたのだが、ボスで躓いてしまった。

 あれ以降は面白みもない凡庸型にステータスを上げた。

 しかしだ。

「はあ〜」

 私は溜め息を吐いた。

 なぜなら次回のイベントはソロプレイでは大変であろうから。

 2タイプのボス。

 さらに両方とも特殊系。

 特殊系は討伐に条件を満たさせないといけなく、それに合わさないといけない。しかし、合わせすぎるのもいけない。

 ゆえにパーティーでは一人が合わせて、残りは補助と攻めで固めることが多い。

 けれどソロプレイではそれができない。しかも次回は2タイプ。

「どっかギルド入るかな〜。でもな〜」

 私は一人ごちた。

 せっかくのフルダイブ型VRMMORPGだ。

 現実離れした世界で別の姿になって他人と遊ぶのも乙である。

「でもなあ〜、パーティー入るとな〜」

 人にはやる気の浮き沈みがあり、とことんやり込む時期や、お休み期間は人それぞれ。

 そのせいか頑張ってる私はよく後を任されることが多い。

 戻ってくるなら問題はないのだが、お休み期間に入る人のほとんどは戻ってこない。そして徐々にプレイヤーは減り……。

「はあ〜」

 過去のことを思い出し、私は溜め息を吐いた。

「どうせ独りになるなら……初めっから……でも、それだと次のイベントがなあ〜」

 私がきちんとリーダーをすれば良いのだが、人見知りの私があれこれと指示を出すのは苦手だし。

 人の意見を聞くのも面倒だし。

「やっぱ独りでいっかな」


  ◇ ◇ ◇


 しかしだ。運営も私のようなソロプレイヤーのことを考えてくれてか、嬉しいことに救援システムを導入してくれた。

 というかそういうのもっと早く導入しろよ。

 救援システムなんてネットゲーム黎明期からあっただろうに。どうしてVRMMOになると無くなるんだよ。

 私はイベントモンスターをばっさばっさと倒す。

 そしてボス挑戦アイテムが貯まるとボス戦を始め、すぐに救援を全プレイヤーに送る。

 すると救援を受け取ってくれたプレイヤー達は虚空から現れ、一緒に戦ってくれる。しかし、中にはレベルが低い者やイベントボスようにチューニングしていない者もいる。そういう時は長期戦になることが多い。

 それでもなんとかボスを倒し、イベントポイントを獲得する。

 だが、それも束の間。

 どうして運営が今まで救援システムを導入しなかったのかが判明した。

 それは––––『集まらなくなったのだ』

 救援時にはプレイヤー名とランクが表示されるので何度も救援を送っていると名前を覚えられるのだ。

 そして、『おいおい、またあのボッチが助けを請うてるぞ』

 と嘲笑され誰も救援に来なくなるのだ。

「最悪だ」

 イベントの中盤期間では私は雑魚を倒すもボスを自発して討伐挑戦はしない。けど時折こちらから救援を受けるとボスを倒しに向かうことにしている。

「ハイエナみたい」

 実際、他人の救援にかこつけてイベントポイントを取るプレイヤーはそう呼ばれている。

 私はなるべくハイエナ呼ばわりされないため戦闘に貢献しなくてはならない。

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ソロプレイヤーの悩み 赤城ハル @akagi-haru

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