ソロに愛された男、曽呂投打

さばりん

ソロに愛された男

『ピッチャー投げた!』


 パコンッ!


『打った、打ち返した! これは大きい、入るか? 入るか……?』


 ボールは見事にスタンドイン。


『ホームラン! 入りました! 今日もソロホームランを打ちました一番 ピッチャー いち


 今日も一番ピッチャー曽呂投打そろとうだは、ソロホームランを連発する。


『これで今シーズン第十一号のホームランとなります!』


 高校野球では、内野手を守っていた選手がピッチャーになったりする場合が多いだろう。

 しかし、今起こっているのはプロの世界での出来事。

 ここ最近、ようやく二刀流という言葉が某野球選手のおかげではやり出したばかりだというのに、信じられない選手が現れた。


 その名前は、曽呂投打そろとうだ


 背番号一、ピッチャー、ファーストが出来る二刀流選手である。

 そしてこの男。

 何をしてもすべて一という数字に何かと縁がある選手なのだ。


 投げては一回を一安打一失点。

 攻めては一安打。

 守りでは一失策。

 全てにおいて一が付いてしまう。


 これでも彼はプロ野球選手。

 高校球児とは訳が違う。

 そして、なにより彼の代名詞は……。


『これで史上百十一回目のサヨナラホームランとなりました曽呂投打そろとうだ


 九回裏ランナー無しで同点の場面で打席が回ってくると、必ず《ソロ》ホームランを打ってサヨナラ勝ちをするという伝説の歴史を継続中だということ。


通算ホームラン数はもちろん百十一本。 

打点百十一。

 打点はすべてソロホームランで打った数。

 これぞ生きる伝説。

 曽呂投打そろとうだである。


ランナーがいない場面でしかホームランが出ない。

いわゆる

まさに、ソロに相応しい男。

その活躍から、ファンの間では『ソロちゃん』という愛称で親しまれている。


『球場の皆様。お待たせいたしました! 本日のヒーローインタビューです!

 本日のヒーローはもちろんこの人! 壱投打選手です!』

「ありがとうございます!」


通算百十一回目のサヨナラソロホームランのヒーローインタビューを受ける。


『さて、今日もソロ男。大活躍ですね』

「そうですね。いつもソロちゃんとか、ソロ男とか言われるんで。そろそろソロを卒業したいです」


そう受け答えると、球場からどっと笑いがこぼれる。


『どうやら最近では、九回同点の場面でソロちゃん……いえ、失礼しました。曽呂選手に打席が回ってくる場面では、前の打席の選手には塁に出るなという指示が出されているという噂もあるのですが、これは本当ですか!?』

「……まあ、そうですね。僕がランナーがいる場面だとまったく打てないので、監督もあえて作戦としてそうしているんだと思います」

『もうここまでくると、【ソロのかみ】通称【ソロしん】とお呼びした方がいいのではないかと思うのですが……』

「やめてください」


インタビューワーの人にいじられて、手を横に振る曽呂選手。


「いやぁ。普通の場面でもホームランは常に狙っているので、それはやめてください」

『わかりました。曽呂選手のソロ以外のホームラン。そろそろかと期待して待っております』

「絶対それ期待してないですよね?」


曽呂選手は、インタビューワーにそう言ってニヤニヤとしている。


『というわけで本日も参りましょう! レッツゴー!』

「ビクトリー!!」


こうして本日も曽呂投打はプレイヤーとしての名を刻んでいく。

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ソロに愛された男、曽呂投打 さばりん @c_sabarin

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