6月3日

 ナツキは休み時間、本を読んだり友達の机に行ったりしているが、今日は今までナツキに言われてきたこと、全て自分の頭の中でこだまする。大丈夫だろうか、彼女を傷つけていないだろうかと。


「ナツキ、昨日はごめん」

「いいよ別に」

「じゃあよかった」

「その代わり……今日も、明日学校来てって言ってな」

「わかった」


 ナツキに喋りかけると、変な世界に引きずられそうな感じが毎回していたが、彼女の前だと素直に自分の思いを話してしまいそうだ。ナツキは頬杖をつき直した。

 教室の窓が空いていたので風がナツキの髪をなびかせ、濡れ羽色を際立たせていた、教室のなかで生徒達が騒ぐ音が響いていたがそこには自分とナツキしか居ないようで、胸がドキドキしていた。今言わないと彼女が消えてしまいそうで、だけど喉まででかかった言葉が出てこなかった。


「ナツキ」

「なに〜」ナツキはボーッとして自分の胸元についてる名札をカチャカチャ指で触っていた。


「ナツキはクラゲになりたいって言ってたやん」

「言ってたな」

「今はどうなん」


 ナツキはそっと自分の顔スレスレまで身を乗り出し近づくと、「今はあんたの女になりたい」と微笑みながら言った。


 自分はナツキの目のブラックホールに吸い込まれ、気がついたらナツキの手を握りしめていた。頬を少し赤らめナツキは自分の頬に柔らかい唇をそっとあてる。


「なんや可愛いやんナツキ」

「……おお、うるせぇ……くない」


 相変わらず言葉使いの悪い口だった、だけどそういう関係もいいかもしれない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

クラゲは空を泳ぐ ちキ @09039921018

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ