第41話 王都散策

「愛莉、準備できたかい?」


「もちろんよ。早く行きましょう。」


久しぶりに二人きりで過ごすことになる。

なんか緊張するな。

すると不意に手を握られて驚いた。


「なんでそんなに驚くのよ。嫌だった?」


「嫌なわけないだろ。急だったからびっくりしただけだよ。」


お互い顔が赤くなった。


「どこから行こうか?」


「まずは冒険者ギルドを見てみないか? こっちの依頼の傾向を見ておきたいんだ。」


「そうね。おそらく私たちは悪目立ちしそうだから迷惑かける前にギルマスにも挨拶しておきましょう。」


「それに護衛もしたからランクアップできるかも聞いてみよう。」


街の中央には王城が鎮座する。

王城と南門をつなぐメインストリートの中間地点にある王城の次に大きな建物が冒険者ギルドだ。

その対面には商業ギルドがある。

東西に横切る大通りには東に大聖堂、西には学校がある。

学校は貴族課、騎士課、魔術課、生産課に別れているそうだ。

城の北東側が貴族地区、北西は学校関係の研修所や工場関係の地区になっている。

城の南側は商業と一般住民の暮らす地区となっている。

マップの熟練度が上がっているので壁に囲まれた王都全域を網羅可能だ。


久しぶりに2人きりなので地球での思い出話や冒険者成りたての懐かしい話をしていると冒険者ギルドに着いた。

ギルドに入るとすでにお昼に近い時間帯のため空いていた。

若く見えるエルフのお姉さんの受付に進んだ。

実年齢は聞かない方が良いだろう。


「初めまして、グリーンランドで冒険者をしてました誠司です。召喚者です。」


「同じく愛莉です。」


「ギルマスに挨拶できますか?」


「パシフィックフォレスト王都中央ギルドへようこそ。受付を担当しておりますマリーと申します。ギルマスの予定を聞いて参りますのでしばらくお待ちください。」


しばらく掲示板の依頼を見ながら待っていた。

こちらの方が討伐依頼が多いようだ。

それに採取依頼も多い。

森が多いからかもしれない。

ダンジョンの依頼もあるので近くにダンジョンもあるのだろう。


「お待たせいたしました。ギルマスの予定が空いてましたのですぐにお会いできるそうです。こちらへどうぞ。」


階段を上り3階にあるギルマスの部屋に案内された。


「座ってくれ。俺はここのギルドの責任者のジョニーだ。今、グリーンランドの王都ギルドに問い合わせて君たちのことは聞いた。クラウンの話では向こうでいろいろやらかしたようだな。それに王城からも話を聞いている。何か困ったことがあったら相談してくれて構わない。それと王女の護衛をしてきたそうだな。Cランクにランクアップするので他のメンバーも連れてきてくれ。マリー、とりあえず二人のランクアップ処理を頼む。」


「わかりました。誠司様、愛莉様。ギルドカードの提出をお願いします。」


カードを渡して処理をお願いした。


「では、素材の買い取りをお願いしてもよろしいですか?」


「それは構わないが、相当溜めていそうだな。聞いた話では保存状態が良いらしいな。スキルの詳しいことは聞かないが、こちらで処理できる量を小出しで頼む。」


「了解です。当分はこちらで活動しようと思ってますのでこれからよろしくお願いします。」


魔石や素材を買い取ってもらい大金持ちになった。

無事Cランクにランクアップもした。

それからCランク以上が利用する武器防具屋、鍛冶屋などを紹介してもらった。

時間がある時に見に行こうと思う。


「次はどこに行く?」


「大聖堂があるようだから転生してくれた神様にお礼と現状の報告をしてこないか?」


「そうだね。今があるのは転生の神様のおかげだものね。」


東通りにある大聖堂へ向かった。

途中にある通りの商店は活気があり、商人も客も笑顔が溢れていた。

グリーンランドの王都は戦争ムードだったので住民に影があった。

あの王様たちが治める国なので国民全てが幸せなのだろう。


大聖堂に入ると神聖な空気を感じた。

この場所は飾りの聖堂ではなく、神聖な場所なのだろう。

奥には大きな神様の像が立っていた。

転生の神とは違うようだ。

この世界を作った創造神様かな?

お祈りをすると転生の神と会った白い空間に転移していた。


「よく来たな。待っておったぞ。我はこの世界の創造神じゃ。」


「初めまして、誠司です。転生の神にお礼を言いにきたのですが?」


「奴は今も忙しくてな。地球が滅んでまだその事後処理が終わっていないのだ。」


「そうなのですか。私たちがお礼を言っていたとお伝えください。」


「承知した。それからまず謝らねばならんな。地球が滅んでしまったこと、誠に申し訳ない。あれは我の弟分の地球の創造神のミスが原因じゃ。お前たちが暮らしていた日本にラノベ小説というものがあり、ここと同じような魔法とスキルに興味があることを知った奴が地球に魔素を作ったのだ。それでステータスを準備して展開した瞬間に地球の容量がパンクし爆発してしまったらしい。それを見た転生の神がお前たちだけでもとこっちに送ったというわけだ。」


「そういうことだったのですね。しかし、私たちはなぜか家族や友人が亡くなったことに感情が無いのです。」


「それは我が地球での思い出を希薄にして悲しみにとらわれないように精神を操作し、こちらの世界を楽しんで生きていって欲しいと願ったからじゃ。」


「そうですか。お気遣いありがとうございます。」


「なるべくお前たちの望みは叶えてやりたいと思うが何か困ったことはあるか?」


「そうですね。転職は可能ですか?」


「この世界では産まれたときに職業は決まってしまうのだ。転職は不可能だが、セカンドジョブが設定できるようにしよう。誠司にはマルチジョブがあるから必要ないな。それにレベル50を越えれば職業の昇格が可能じゃ。愛莉は大賢者になれるがどうする?」


「お願いします。セカンドはテイマーが良いです。」


*ステータス

 名前: 三上 愛莉

 称号: 転移者、Cランク冒険者

 職業: 1st 大賢者、2nd テイマー

 性別: 女

 年齢: 15歳

 レベル: 65


「誠司は何かあるか?」


「ステータス値が999で頭打ちになったのですが、上限でしょうか?」


「この世界の者は、まず999まで到達しないのだが。では新たなスキル『上限解放』を授けよう。これはレベルにも対応しているので、Lv.99の頭打ちは無くなるはずじゃ。」


「ありがとうございます。後日、他のメンバーも連れてきますのでよろしくお願いします。ところで地球の文化をこちらの世界に普及させることは問題でしょうか?」


「いや、問題ないぞ。せっかく発展した地球の文化を途絶えさせるのはもったいない。どんどん広げてもらって構わない。特に食文化は遅れているので頼むぞ。ただし、マイルームにある電化製品は制限させてもらう。あれはこちらの文化では再現不可能じゃ。まず半導体の再現が無理だからな。魔法や魔石、こちらの材料のみを使って再現できるものであれば良しとしよう。」


「わかりました。なるべくこちらの材料で再現し普及していこうと思います。あと、魔王討伐みたいな使命はあるのでしょうか?」


「無い! 現魔王と魔族たちは独自の文化で発展し、独立した国を築いている。人間族から手を出さなければ何もしてこないはずだ。」


「了解です。今後もこちらでの生活を楽しませていただこうと思います。」


「そうしてくれ。」


「ところで愛莉さん。大人しいですが、神様にも人見知りモードですか?」


「うるさい! 緊張しているだけよ。神様に会って緊張していない誠司がおかしいのよ。」


「ふふふ、仲が良いな。それではまた会いに来るように。見守っておるぞ。」


そして、白い世界から聖堂へ戻った。


「何があったのですか! 創造神様が目が開けていられないほど光ってましたが。災いが起こるのでしょうか。。。 もしかして神託がありましたか?」


神官さんが冷や汗をかいて焦っている。


「特に何も。私たちは召喚者なので神様が祝福を与えてくれたのだと思います。」


「そうですか。なら良いのですが。。。」


しつこく聞かれそうなので逃げるように愛莉と聖堂の外へ出た。


「ちょっと驚いたね。創造神様に会えるとは思っていなかったよ。」


「そうね。私はテーマーに成れたからモフモフをいっぱい使役するわ。」


愛猫のミカンだけでは物足りなかったらしい。


「商店街と市場を見ながら買い食いしよう。お昼だし、お腹減ってきたよ。」


「そうしましょう。」


市場にはグリーンランドには無かった食材がたくさんあった。

特に森が多いので果実やキノコ類が豊富らしい。

絨毯や向こうには無かった生地も売られていた。

春菜と未来に報告しておこう。


翌日、春菜と未来もセカンドジョブを得た。

春菜は料理人からシェフになり、セカンドはプリーストになった。

未来はまだレベルが足りないので昇格は無しだが、セカンドはアーチャーになった。

カレンは現地人なので保留だ。



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