第37話 パシフィックフォレストへ入国

「ミレーユ様、国境の関所を通るので馬車に乗ってください。流石に国境を越えていない王女がいきなり城に現れたら騒ぎになりますからね。」


「もう国境に着いたのですか?! 早すぎませんか?」


いつの間にかに農園の花壇の前にテーブルと椅子を設置し、お菓子をつまみながら女子会をしていた王女が驚いていた。

現在は国境の関所が見える位置にある森の中だ。

そこに王家の馬車を出し、王女の到着を待っている。

ちなみに今のマイルーム(シェアハウス版)には玄関がある。

玄関のドアを開けた人が入る前に居た場所につながるのだ。

俺が開ければこの森に、愛莉たちが開ければグリーンランド(召喚された国)の王都につながる。

現在は俺が開けた後、開けっ放しにしている。

そして、春菜だけはお留守番をしてもらっている。

春菜が残れば転移魔法を使わなくてもマイルームをグリーンランドにつなげることができるからだ。

ルームウェアーからドレスに着替えた王女ミレーユが出てきた。

地球の素材で作った服では外に出れないからね。

部屋の中ではもう普通の女の子にしか見えないが、やはり王女のドレスに着替えると気品があるな。


「お待たせいたしましたわ。では、行きましょうか。」


「カレンはまた御者をお願いします。愛莉と俺は馬車の両脇を護衛しますので。ミレーユ様は馬車の中へどうぞ。」


王女が乗ったのを確認し、ゆっくりと関所へ向かった。


「止まれ! あっ! これは失礼いたしました。王女様、お帰りなさいませ。」


関所の兵士が全員並び敬礼をして王女の帰りを喜んだ。


「皆さま、お疲れ様です。無事帰って参りました。今後も警備頑張ってください。」


「有難き幸せ。我らが敵一人も我が国への侵入を許しません!」


馬車が見えなくなるまで兵士たちは敬礼をしていた。


「皆さんはまた部屋で寛いでいてください。王都近くまでまた俺がダッシュしますので。」


「ここから王都までは馬車で3日程だ。このまま馬車で移動でも良いが?」 >カレン


「俺なら本気を出せば今日中に辿り着くかもしれないからミレーユ様とカレンは帰宅準備をしてくれて構わない。」


「えっ? もう着いちゃうのですか? もう少し快適なお部屋で過ごしたかったわ。私、元の生活に戻れるか心配なの。春菜さんの料理に慣れちゃったから王城の料理が物足りなくなりそうで怖いわ。」


「春菜がこちらの素材でできた料理の開発が済んだら持っていきますよ。」


「それは楽しみにしておりますわ。それと旅の報告と助けて頂いたお礼がありますので皆さんも王城に来てくださいね。特に誠司さんは両親に紹介しなければならないので覚悟しておいてくださいね。」


「えっ?! まさか婚約の話って本気なのですか?」


「本気に決まっているじゃない。逃がしませんからね!」


「俺には愛莉が。。。 それに春菜も。。。」


「話はついてるので大丈夫です。」


俺の知らないところで話がついているらしい。

現実逃避に入った俺は我武者羅に王都へ向けて走った。


「はぁ~。逃亡しようかな。」


薄暗くなるころには王都の門の前に辿り着いた。

王都入場は明日にしよう。

少し戻って門から見えない場所でマイルームを起動した。


「ただいま。王都に着いたよ。」


「本当に今日中に着いたのですね。流石です。」 >ミレーユ


「じゃあ、今夜は最後の夜になるのね。晩御飯は豪華にしますよ~。」 >春菜


「折角仲良くなれたのに寂しいわ。今まで心を許せるお友達が居なかったの。みんな私の地位に群がって利用することしか考えていないご令嬢ばかりしかいなかったから。数日だったけど本当に楽しかったわ。これからも仲良くしてくださいね。絶対に遊びに来てくださいよ。」 >ミレーユ


「「もちろんよ。」」


「春菜、ちょっといいかな。今出来ているこっちの世界の材料だけで作った料理をなるだけ作ってこのポーチに入れてくれるかな。王女にお土産で渡したいんだ。このポーチは時間停止を付与したアイテムボックスになっているから。」


「わかったわ。任せといて。」


「未来も出来た分だけで良いから衣服を入れておいて。」


「わかったわ。下着とパジャマとドレスが完成しているわ。」


俺と愛莉からのお土産は、愛莉がデザインしたネックレスに俺が状態異常無効と念話を付与したものにした。

カレンはしばらくミレーユ様の近衛隊に配属し、一番側で護衛を行うそうだ。

気の許せるカレンが側にいた方が安心だろう。

王女近衛隊は行きの魔物の襲撃で全滅した。

近衛隊が再編成されたらカレンは開放される。


その夜、豪華な送別会が行われた。

その後、夜更けまで女子会が続いたようだ。

俺は明日ミレーユの両親である王様と王妃様に会うことになるらしいので気が重い。

今日は寝れないかもと思っていたが、街道を爆走して疲れていたらしくいつの間にかに爆睡していた。

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