第26話 ダンジョン 6階層

翌日、6階層に向けて出発した。


「気が重いわ。」


「これから虫と戦わなきゃいけないとか憂鬱になるわ。」


2人とも大きな溜め息をついた。

俺だって嫌だし。

男だからそんな弱気なこと言えないだけだし。

森を歩いていると突然木の上から糸が飛んできた。

飛んできた方向をよく見ると同系色の緑の巨大な芋虫がいた。

芋虫はカメの甲羅のようなシールドを背負っている。


*鑑定

  種族: シールドキャタピラー(芋虫)

  ランク: C

  スキル: 糸をはく、糸操作、糸拘束、防御体勢

  弱点: 火魔法、口、腹

  アイテム: 魔石、糸、甲羅、金鉱石


「ファイアアロー!」


ダンゴムシのように丸まり、甲羅の中に隠れた。

炎の矢は甲羅に弾かれ消えた。


「なんかムカつくわね。ファイアストーム!」


周囲の木も巻き込み、消し炭となった。


「ダンジョンの木だからすぐ再生するだろうし、まあいいか。」


「そうよ。ガンガン燃やすわよ!」


「俺たちが炎に巻かれて焼け死ぬ事故は勘弁してくれよ。」


「分かっているわよ。その時はちゃんと水魔法で消火するから大丈夫よ。」


大丈夫な気がしないのは俺だけではないだろう。

春菜を見てみるとやはり不安そうな顔をしていた。


「まずは向かって右側にある宝箱を目指すよ。『ペチョ』 うわっ!」


蜘蛛の巣?

カサカサ音を立てながら毒々しい色をした1m以上もある蜘蛛が迫ってきた。


*鑑定

  種族: ポイズンスパイダー(蜘蛛)

  ランク: C+

  スキル: 毒牙攻撃、糸を出す、糸操作、糸拘束、糸を紡ぐ、罠設置

  弱点: 火魔法、目、足

  アイテム: 魔石、糸、毒牙、足(珍味)、金鉱石


スキルのコピーを済ませたのでもう用済みだ。


「愛莉さん、やっちゃってください。」


「あいよ。ファイアストーム!」


蜘蛛の巣ごと綺麗に燃え尽きた。

春菜が時々糸で拘束されるハプニングが発生したが、何とか宝箱に辿り着いた。

中には高級MP回復ポーションが入っていた。

今のところ使わないのでインベントリへ収納と。

それに天然物はおいしくないしね。

もう一つの宝箱は反対側なのでしばらく木々を焼き払いながら進む。

遠目にボスの姿が見えたが、かなりでかい。

4mは遥かに超えているだろう。

巨大な鎌を持ったカマキリだった。


*鑑定

  種族: デスサイズビックマンティス(蟷螂)(6階層フロアボス)

  ランク: B-

  スキル: 鎌攻撃、カマイタチ(風魔法)、切り刻む、連撃、覇気

  弱点: 火魔法、腹、首

  アイテム: 魔石、大鎌、羽、金鉱石、宝箱


しばらく歩いてやっともう一つの宝箱を手に入れた。

中にはナイフが入っていた。


*鑑定

  聖なるナイフ

  HP:+100、DEF:+50、HP回復速度・回復量増強、回復魔法強化


「このナイフは春菜が持ってて。」


「了解。ありがとう。」


「それじゃ、カマキリのボスに会いに行こうか。ボスも火が弱点だよ。」


魔法の射程距離までゆっくりと近づく。

まだこちらに気付いていない。

よし、射程圏内に入った。

スキルはコピーさせてもらってと。


「いくぞ! ファイアストーム!」

「ファイアストーム!」

「ファイアストーム!」

「メテオストライク!」

「エクスプロージョン!」


全員で魔法を畳み掛ける。


「インフェルノ!」


最後に愛莉の極大魔法が放たれた。

凄い魔法だ。

地面が熱でマグマ化している。

ボスは何の抵抗もできないまま燃え尽きた。

まともに戦っていたら結構苦労していただろう。

ドロップアイテムと宝箱を回収して6-7階層間安全エリアへ向かった。

宝箱にはオリハルコンの剣が入っていた。

鍛冶スキルを使ってステータス補正とスキル付与を行い、俺のメイン武器になった。


*鑑定

  オリハルコンの剣[改]

  STR:+300、AGI:+100、DEX:+100、吸血、修復


追手の確認をしておこう。


<1階層フロア情報>

 場所: メビウス 1階層

 フィールド: 洞窟

 探索者: 30名

 宝箱: 0個

 魔物: ダンジョンスライム G 5

     ダンジョンコウモリ G 12


<2階層フロア情報>

 場所: メビウス 2階層

 フィールド: 洞窟

 探索者: 12名

 宝箱: 0個

 魔物: ゴブリン F- 20

     ウルフ F 25


<3階層フロア情報>

 場所: メビウス 3階層

 フィールド: 森林

 探索者: 6名

 宝箱: 0個

 魔物: ワイルドビックボア F+ 30

     コボルト F 35


<4階層フロア情報>

 場所: メビウス 4階層

 フィールド: 草原

 探索者: 2名

 宝箱: 0個

 魔物: ホーンラビット F 45

     スリープシープ F+ 48

     バーサーカーブル E 50


<5階層フロア情報>

 場所: メビウス 5階層

 フィールド: 草原、森林

 探索者: 0名

 宝箱: 0個

 魔物: オーク E 60

     ハイオーク E+ 40

     オーガ C 4

     ミノタウロス C+ 1


合計50名が探索している。

この人数は普通の冒険者ではないだろう。

過密過ぎて狩りの効率が悪すぎる。

やはり国が派遣した俺たちの追手と考えるのが妥当だろう。

現状、先行部隊が4階層を探索中のようだ。

高ランクの冒険者ペアかな?

騎士団団長ガモジールとジョイさん?

誰なのかまでは鑑定できないが高レベルの人であろう。


「今、4階層まで追手が迫っている。5階層を超えるのは難しいとは思うけど警戒はしておこう。」


「そうね。もう少し奥まで逃げておいた方が良いかもね。」


「明日は7階層を攻略しておこう。」


掲示板の方もチェックしておくかな。


【転移者限定掲示板】

 ※第21話からの続き


48.裁縫師(女)

 そうよね。

 コレクター君たちが捕まらないことを祈りましょう。


49.魔法使い(女)

 コレクター君と賢者さんの他に料理人さんも居なくなったらしいわよ。

 コレクター君と一緒なのかしら?


50.裁縫師(女)

 え? それ本当?

 あの子、引っ込み思案っぽかったし大丈夫かしら?

 この生活が嫌になって逃亡したんじゃ。。。

 心配だわ。


51.アサシン(男)

 料理人さんはコレクター君たちとパーティを組んだらしいぞ。


52.裁縫師(女)

 良かった。

 それなら一緒ね。安心したわ。


53.勇者(男)

 ダンジョン探索が今朝から始まったらしいぞ。

 冒険者と騎士団の精鋭50名で探索しているらしい。

 見つかるのも時間の問題だろうな。

 それと今日は残った兵士と一緒に外でスライムを狩るってさ。

 やっと魔物狩りができるぞ。


54.薬師(女)

 回復師さんと一緒にセーラさんに教えてもらいながら回復ポーション作ったの。

 人数分あるからみんな取りに来てね。


55.狩人(女)

 ありがとう。お疲れ様。

 有難く使わせてもらうわね。


56.剣聖(女)

 フフフ。

 やっと魔物を殺せるのか。

 我が剣技を受けるのだ!

 腕が鳴るぞ。


57.勇者(男)

 はぁ~。疲れたな。

 魔物を殺すのは虫を殺す程度の感覚だと思っていたが、スライムでも精神的に結構くるな。

 ゴブリンを殺せるだろうか。

 コレクター君が言っていたことがわかった気がするよ。


58.聖女(女)

 あたしは光魔法で浄化しただけだから何も感じんかった。


59.魔法使い(女)

 私は火魔法で消し炭にしたわ。

 ファイアボールって思っていたより強いみたい?


60.狩人(女)

 物理的に殺すのと遠距離から魔法で殺すのではやはり差があるみたいだね。

 私は弓だけど多少罪悪感みたいなのはあったわ。

 何もしなければスライムは攻撃してこないしね。


61.剣聖(女)

 スライムでは物足りない!


62.鍛冶師(男)

 非戦闘員にはスライムは丁度良い。

 先制攻撃されたら太刀打ちできないし。

 何匹か狩れてレベアップできたし良かった。


63.裁縫師(女)

 城の雰囲気が変わってないからまだコレクター君たちは見つかっていないみたいだね。

 無事だと良いんだけど。



「春菜。裁縫師さんと面識あるの?」


「こっちに来て初めて話しかけてくれたのが裁縫師の未来さんだったの。優しい人だったよ。」


「そうなんだ。ずっと俺たちのことを心配してくれているんだよね。愛莉、仲間にに入れることを考えてみないか?」


「そうね。仲間は多いに越したことはないと思うは。ただお荷物になるような人と雰囲気を悪くする人は勘弁ね。ライバルが増えるのは嫌だけど。」


最後の方は小声だったので聞き取れなかった。


「春菜はどう思う?」


「私も未来さんなら問題ないと思うわ。でも、私と同じ非戦闘職なのよね。」


「春菜と同じように俺がスキルを付与してしまえば問題無いさ。俺が前衛に集中できるように中堅で索敵、情報収集、参謀をやってもらおうかと思う。さらにもう一人、俺と前衛ができる人がいると良いのだが。勇者君は頼り無さすぎるし、剣聖さんはぶっ飛んでるから論外だよね。」


「私も同意見です。落ち着いたら未来さんを迎えに行きましょう。」


「疲れたから今日はゆっくりしよう。春菜、悪いけどおいしいのお願いね。」


「わかりました。今日はすき焼きですよ。」


ご飯が出来るまでに芋虫と蜘蛛からコピーした糸操作を試してみることにした。

もし追手が迫ったら糸で拘束して逃げようと考えてる。

それにしても良かったよ。

糸が口やお尻から出てきたらどうしようかと思った。

糸は人差し指から出ました。

それから蜘蛛のスキルにあった糸を紡ぐを使って糸を紡いだ。

その糸を使って裁縫スキルを使って布を織った。

生地が出来て喜んだが、デザインセンスの無い俺にはそこから先が進まない。

雑巾が精一杯だった。

やはり専門の裁縫師さんに任せよう。

ちなみに芋虫の糸で作った布はシルクに、蜘蛛の糸で作った布は綿に似ていた。

晩御飯のすき焼きはとてもおいしかったです。

お肉は4階層のバーサーカーブルの肉を使ってます。

黒毛和牛にも負けない霜降りでした。

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