第22話 逃走中

ガモジールとジョイがダンジョンの入口に着いた。


「団長殿、お疲れ様です。」


「コレクターの田中誠司と賢者の三上愛莉、そして料理人の村瀬春菜が来たと思うがもう入場してしまったか?」


「え? 2人なら3日前に入場してそのままです。料理人?は来ていません。」


「何? 昨日の朝、王城で話をしているからそんなはずは無い。」


「そう言われましても、ダンジョンから退出しておりません。」


「それじゃ出入口を使わずに出たということか? まさか賢者が転移魔法を覚えたということか?」


「なんということだ。転移魔法が使える魔導士は絶えたと聞いている。賢者も最重要人物となったな。なんとしても2人とも連れて帰らねばならんぞ。ジョイ、すぐにダンジョンに入る準備をするのだ。見つけるまでは帰れないから食糧も十分確保するのだぞ。」


「私は先に城に戻って捜索隊の準備を行います。」


「頼んだぞ。俺は上層部を先に探索しておく。」


ジョイは無理をして潰してしまった馬を捨て、新たな馬で城へ戻った。

夕刻、ジョイが王城に戻ったタイミングでサリーとセーラも交えて本日の情報交換と王への報告会を開いた。


「まず、ジョイから報告せよ。」


「はっ! 私と団長がダンジョンに到着したときにはすでにコレクターたちはおりませんでした。門番の兵士によると3日前に入場して以来、出入り口を通過した履歴が無いそうです。」


「えっ? 他の転移者の情報では朝食の時に見かけたと。そして、一人の女の子と話していたと言っておりましたよ?」


「私も直接コレクターの田中殿と言葉を交わしている。その話していた女性は料理人の村瀬殿であろう。パーティに加えると報告があった。」


「おかしいではないか。ダンジョンを出ていないのになぜ王城にいるのだ?」


「恐らくですが、賢者が転移魔法を覚えたのかもしれません。そうなるとダンジョンでは無い場所に飛んだ可能性も出てきてしまい捜索が困難になってしまいます。」


「大丈夫です。もし転移魔法を覚えたとしても一度でも行ったことのある場所以外は転移不可能ですので遠くには行ってないと思われます。」


「そうか。ならサリーよ。賢者が転移魔法を覚えた可能性はあるのか?」


「あの子の魔法習得速度は異常です。おそらく覚えた可能性は高いと考えます。そして、ダンジョン内から直接転移をし王城に現れ、さらに直接ダンジョン内に転移したと考えます。」


「では、ダンジョン内に居るという想定で捜索しよう。ダンジョン探索隊の編成を急いで行え。それでコレクターや賢者はどれほど強くなっているんだ? サリーよ、ギルドで得た情報を報告せよ。」


「はい。ギルドの話では現在Cランク間際のDランクだそうです。護衛依頼を達成すればCランクにランクアップすると言っておりました。先日のオークジェネラルの討伐の際は配下のオーク200頭以上、ハイオーク100頭以上、オークナイト30頭、オークマジシャン、オークプリーストも2人だけで殲滅したそうです。」


「我が国の軍隊を束にしても敵わないかもしれないな。強引に行えば国が滅ぼされる可能性も視野に入れなければならん。穏便に事をすすめるのだぞ。」


「「「はっ!」」」


その頃、ガモジールは2階層手前の安全エリアに居るとも知らず、先を急いで捜索していた。

彼らは捜索中に午前0時を迎え、変動に巻き込まれてダンジョン外に放り出された。

翌朝、ギルドにも応援を要請しダンジョン捜索隊が編成された。

次の日の朝から本格的に捜索が開始される予定である。

ガモジールは毎回ダンジョンの変動に巻き込まれ外に放出されるのだった。

誠司はマップで警戒しているため、ガモジールが近づくことは無かった。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ★


「おはよう。それじゃ、ダンジョンに向かおうか。春菜はこれを装備してくれ。」


以前、愛莉に拒否された魔女っ娘装備を渡した。


「えっ! これ着るの? かなり恥ずかしいんだけど。でも、何でもするって言ったし。わかったわ、装備してくるね。」


「誠司、あれって前に私に着せようとした装備よね?」


「せっかく作ったんだし、もったいないじゃん? ちゃんと自動サイズ調整を付与しておいたから大丈夫だと思うよ。」


恥ずかしそうに自分の部屋から春菜が出てきた。

谷間がヤバいですね。

目のやり場に困ります。


「かわいいよ。似合ってる。」


「そうかな?」


「誠司のエッチ。」


愛莉の言葉は無視する。


「とりあえず、必要と思われるスキルを付与しておくから手を出して。」


「え? はい、どうぞ。」


*ステータス

 名前: 村瀬 春菜

 称号: 転移者

 職業: 料理人

 性別: 女

 年齢: 16歳

 レベル: 1


 スキル

  料理、インベントリ、家事、解体、食材鑑定、鑑定、レシピ創造、全属性耐性、

  物理攻撃耐性、全状態異常無効


 魔法スキル

  生活魔法、全属性魔法


 ユニークスキル

  料理は愛情(旨味が増す)、味覚向上


パーティに春菜を登録し、経験値分配を春菜100%に設定した。

低ランクの魔物をいくら倒しても高レベルになってしまった愛莉と俺にはゴミのような経験値だから春菜をまずはパワーレベリングしてしまう。


「じゃあ、ダンジョンに入るよ。春菜は攻撃を食らわないように注意してくれ。余裕があるときは支援で。愛莉は春菜の護衛に徹してくれ。基本的に俺が狩る。」


「「了解!」」


マイルームを出て地下2階層へ向かった。

掲示板で俺たちが捜索されていることが分かっていつのでもちろん警戒は忘れない。

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