第21話 農園の種まき

「ジョイさんに話てきたから村瀬さんのことは大丈夫だと思うよ。早速だけど移動しようか。また王様につかまると面倒だからさ。」


「そうだね。じゃあ、私がダンジョンまで転移魔法を使うから2人とも手をつないで。」


「愛莉ちゃん、転移魔法まで使えるの? 私なんてやっと水と火の属性魔法を覚えたところよ。」


「私は賢者で魔法の専門家だもの。それぞれの得意分野で貢献すれば良いのよ。春菜ちゃんにはおいしいご飯を期待しているからね。」


「わかったわ。お昼ご飯から頑張るから期待してて。」


「それじゃ、行くわよ。ダンジョン・メビウスにテレポート!」


無事に地下1階と2階の間の階段踊り場安全エリアに到着した。

到着して早々に俺のマイルームに戻った。


「今日の狩りは止めておこう。村瀬さんの歓迎会をしようじゃないか。」


「誠司君。春菜って呼んでくれないかな。苗字で呼ばれると仲間って気がしないのよね。」


「了解。春菜ちゃん、申し訳ないけど自分の歓迎会のための料理をよろしく。」


「呼び捨てで良いわよ。じゃあ、お昼の仕込みは終わってるので、晩御飯は豪華に行きましょう! ちなみにお昼はカレーライスですよ。」


「「やったー!!」」


「じゃあ、お昼まで解放された農地の手入れをしてみようよ。」


「農地?」


「マイルームに拡張された庭みたいな感じ? 家庭菜園をしようかなって。」


「春菜ちゃんもお花好き? 花壇を作ろうと思うんだ。一緒にどうかな?」


「誠司君のマイルームって呆れるほど凄いわね。お花は大好きよ。」


「そうだ。俺のマイルームがカスタマイズできるようになって、どうやらシェアハウスに変更できるみたいなんだ。愛莉と春菜の個室も作ったし、それぞれのマイルームと融合しちゃう?」


「そうね。今、自分のマイルームは入退場のために経由するくらいでしか使ってないし、直接ここから出入りできるならその方が楽ね。」


「私もここが気に入っているし、マイルームには何もないからOKよ。」


マイルーム設定⇒カスタマイズ⇒シェアハウス化

登録者: 田中誠司、三上愛莉、村瀬春菜

セキュリティ設定 : 登録者以外入室不可、ログイン状態非表示


「設定完了したよ。ちなみに俺たち以外入室できないし、ログイン非表示にしたから他のクラスメイトは俺たちの生存すら分からなくなったよ。」


「それは良かった。王様からの追跡も面倒だし、クラスメイトが裏切る可能性もあるしね。」


「どうせお友達もいなかったし、私に連絡くれる人もいないと思うし、非表示で全く問題なしです。ちょっと虚しい。」


「よし、農園に行こう!」


いつの間にかに出来ていた玄関から外へ出ると耕された農地が広がっていた。

太陽の光が降り注いでいるように明るく暖かい。

心地良いそよ風が吹いている。

広さは体育館2個分くらいはありそうだ。


「どんな感じに植えて行こうか?」


「手前に花畑、奥に果樹園、中央は野菜って感じでどう?」


「私、イチゴとモモが欲しいです。ケーキに使いたいです。」


「じゃあ、ホームセンターにあった種の袋がたくさん並んでた棚を棚ごと出しておくから好きな種を2人で植えてね。あっ、球根や苗もあるわ。これも出しておくね。足りなかったら言ってちょうだい。俺は奥の方に果樹を植えてくるよ。」


2人は楽しそうに種を選び始めた。

本当に仲良くなったみたいで良かった。

俺はモモ、ナシ、リンゴ、ブドウなどの果樹を植えていった。

でも、収穫まで何年かかるのだろうか。

確かモモ・クリ3年とかいうの聞いた覚えがあるな。

ある程度植え終わったところで丁度お昼となった。

春菜のカレーは野菜がゴロゴロ入った家庭の味がするカレーだった。

懐かしくなり本当においしかった。

午後からは野菜の種を蒔く予定だ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ★


その頃、王城にはギルドからオークジェネラルの討伐が告げられた。


「王様、森の主オークジェネラルが討伐されました。」


「何! 軍隊や上級冒険者でも全滅し討伐を諦めたジェネラルが倒されただと? 長年放置していたのだから配下の魔物も多かっただろうに。誰が倒したのだ?」


「それが、コレクターと賢者の2人だそうです。2人で配下も含め殲滅したとギルドから報告がありました。」


「なんだと?! 奴らはそんなに成長しているのか? 団長を至急呼ぶのだ。2人を軍隊に参加させるための作戦を練るぞ。」


中隊長レベルまでが招集され、コレクターと賢者を軍隊に取り込むための大会議が始まった。


「なぜ、奴隷契約は失敗に終わったのだ?」


「コレクターは鑑定のスキルを持っていたから奴隷化の魔法陣があることに気付いていたのだと思います。」


「ということは初めからバレていたということか? 身の危険を感じて逃亡する恐れがあるな。今、2人はどこにいるのだ?」


「2人は料理人をパーティに加え、ダンジョンに向かったそうです。時間的にはやっとダンジョンに到着したくらいだと思われます。」


「ではすぐに連れ戻すのだ。ジェネラルを倒せるだけの戦闘力を持っている。すでに近衛部隊ですら敵わない可能性もあるから、無理やり連れてくることはできないだろう。なるべく穏便にな。最悪は残っている勇者たちを囮に使うのだ。ダンジョンに入られてしまうと捜索は困難だ。すぐに迎え。」


「了解しました。大人数では警戒すると思いますので、面識のある私、ガモジールとジョイで向かいます。サリーとセーラは勇者たちとギルドから情報を収集してくれ。」


ガモジール団長とジョイ副団長は早馬でダンジョンに向かった。

サリー魔法魔法師団長は冒険者ギルドへ、セーラ宮廷回復師は召喚者たちの元へ向かった。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ★


【転移者限定掲示板】

※上記は愚痴が続いているだけなので省略


35.勇者(男)

 久しぶりの休みだな。

 この世界には休みという概念は無いのか?

 毎日訓練続きだったぞ。


36.魔法使い(女)

 うちの担当メイドに聞いた話では休みって何ですか?って言ってたわよ。

 それより何か王城内が騒がしくない?

 おかげで休みがもらえて良かったんだけど。


37.回復師(女)

 コレクターさんが何かやらかしたみたいね。

 さっきセーラさんがコレクターさんの情報を聞いてきたわ。

 昨日、朝食のときチラッと見たってだけ伝えといたけど。


38.勇者(男)

 俺たちクラスメイトだけど通信制だし、ちゃんと話したこと無いよな。


39.アサシン(男)

 情報仕入れてきたぞ!

 コレクター君が誰も倒せなかった森のボスを討伐したらしいぞ。

 いつの間にか随分と差をつけられちまったな。

 俺たちも早く魔物を狩りに行ってレベルを上げたいな。


40.勇者(男)

 何だって!!

 それって俺の役目だったんじゃないのか?

 俺の勇者の立場がさらに危うくなっているのだが。。。


41.聖女(女)

 団長と副団長がコレクター君を追ってダンジョンに向かったってさ。

 サリーさんはギルドへ行ったらしい。

 連れ戻して強制的に戦争に行かせる気じゃね?

 コレクター君が言ってたこと、本当かもよ?

 あたしらも警戒した方がいいんじゃね?


42.剣聖(女)

 ダンジョンだって!


43.美術師(男)

 剣聖さん、反応するところがおかしいよ。

 今はそれどころじゃないから。


44.鍛冶師(男)

 まだ魔物を倒した経験の無いLv.1の俺たちに何の価値も無いような気がするが。


45.狩人(女)

 でも、転移者だからコレクター君たちのように成長速度が異常に早いかもね。

 それを見込んで奴隷化や洗脳に王たちが舵をとるかもしれないから警戒しましょ。


46.裁縫師(女)

 コレクター君が助けに来てくれないかな。


47.薬師(女)

 自分たちが狙われているんだから無理でしょうね。


48.裁縫師(女)

 そうよね。

 コレクター君たちが捕まらないことを祈りましょう。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ★


昼飯の後、掲示板の書き込みを覗いてみた。


「愛莉、春菜。王様たちの追跡が始まったみたいだ。当分、ダンジョンから出ない方が良さそうだ。食糧もたくさんあるし、ダンジョンを探索しながら時間を潰そう。出来ればダンジョンで死んだと誤解して諦めてくれると良いのだが。掲示板への書き込み禁止ね。」


「了解。春菜ちゃんのおかげでおいしいご飯は食べれるし、温泉はあるし。全く外に出なくても問題無いわね。」


「そうね。ここにはゲームも本もたくさんあるし、退屈しないわ。畑仕事も楽しいわ。」


「とりあえず、明日からはダンジョンの探索と春菜のレベ上げかな。」


「「は~い。」」


午後は野菜の種まきを行い、晩飯は3人で春菜の歓迎会を行った。

春菜の料理はどれもおいしく、それにお菓子やケーキも最高だった。

春菜を仲間にして良かった。




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