第6話 ハロー♪ミスター・キューポラ

「絶景絶景♪」

 ミスター・キューポラはその光景悪あがきを眺めながら、上機嫌にお猪口を煽った。

「あなた。あんな馬鹿騒ぎを肴にお酒なんて美味しいのですか?」

 傍らで熱燗を持ったねむこさんは、呆れ半分に尋ねる。

「もちろんだ。何せ、騒ぎの真ん中にいるのはうちの孫だからな」

息子孫の親たちもですよ。いい年して何をしてるんだか…」

「いいじゃねぇか。活き活きと生きてくれる事ほど、いい親孝行はないってもんだ」

「物は言いようですね。…でも、少しは分かりますよ」

「当然だろ。お前の子でもあるんだからな」

 あくまで個人の活動に過ぎなかったハロウィンの夢ナイトメアに、同調者・賛同者が増えていくのにそれほど時間はかからなかった。

 だが悪夢ナイトメアの拡大・拡散は、過剰な神格化カルト的思想を図る者や、承認欲求いいね!を満たすためだけに便乗する者など、本来の理念から逸脱したただ暴れたいだけの輩をも集める結果となり、痛ましい事件不条理な暴力不愉快な騒動不法占拠までにも、"ハロウィン"の名が関されるようになってしまった。

 ハロウィンを"死を畏れ、生を尊ぶ"トリックアンドトリート期間と捉えてきた世代からは、"命を冒涜した行為"であると、非難を受けるようにもなってしまった。

 しかし、どんな世代の中にも理解者はいるものである。

 ハロウィンの夢ナイトメアを孫にもつ、彼らふたりのように。

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