第3話 ハロウィンの夢

 命あふれかえる季節ハロウィンの夜。

 住民が"死"モール・モースから逃れるために家々に閉じこもる中、ふたつの影があった。

「無理に付き合う事はなかったのに…」

「来て欲しかったんでしょ?」

「まぁ…。でも誘いづらくて…」

「気にしなくていい。それに…」

「それに?」

「その姿は、カッコいいから見たかったし」

「そんな事言われたら自信持っちゃうね」

「持ってもいいじゃない。ただの趣味で世界を変えつつあるなんだから」

「変えたんじゃない。世界が勝手に変わっていっただけさ」

 ーーーー…。

 それは、闇の奥底からあふれ出るような声だった。

「さぁ。悪夢を見せてあげましょう」

「ああ。往生際悪くいこう」

 死に狩り。

 恐怖をデザインした仮装を纏い、"死"モール・モースを否定する武器で"死"モール・モースを退ける。

 それは、あくまで彼のささやかな趣味であり抵抗だった。

 自然の死を拒み生き永らえる行為は、後に命への冒涜とも、生者の真の様相とも言われ、物議を醸しながらさらに肥大化していく事態となるのだが、当の本人はまだ知る由もなく、今宵も“死”が恐れおののく悪夢となった。

 彼が、ハロウィンの夢ナイトメアと呼ばれるようになるのも、もう少し後のことである。

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