後輩の人狼少女が俺を尊いと慕ってくる

ムネミツ

後輩の人狼少女が俺を尊いと慕ってくる

 「校長! 何で彼女は拘束されてるんですか!」

 俺、日向晴希ひなた・はるきは校長室に呼び出されてドン引きしていた。

 「ふむ、彼女が君以外と組みたくないと学園側で選んだパートナー候補を次々と

病院送りにしからだ」

 校長、異形の怪物達と戦う退魔士を育成する学園の長である赤いスーツを纏った

赤毛のロングヘアーに眼鏡を掛けた美女が冷淡に答える。

 そんな校長と、ミイラかと思うような白い拘束衣を着せられ顔の下半分を黒い金属のマスクで覆ったピンクパープル髪の少女を見比べる。

 「わかりました、彼女と組みます」

 俺は校長に言い、拘束された少女を解放すべく近づいた。

 人差し指と中指を突き出し剣指を作り、指先からオレンジ色に光るエネルギーの

剣を出して少女の拘束衣を切り裂きマスクの留め具も破壊する。

 

 少女を解放したと思った瞬間、俺は少女に抱きしめられ首筋に噛み付かれた。

 噛み付かれ血を吸われながらも俺は少女から漂う甘い香りに何故か尊さを感じた。

 

 「……先輩♪ 何て穏やかな寝顔でしょう、尊いです♪」

 俺のそばで誰かの声が聞こえる。

 「目の前に突然現れた私を、迷う事無く助けに来た御心♪ 温かく情熱的な味のする血液♪ 春の陽だまりの様な心地良い臭い♪ 全てが愛おしく尊い♪」

 意識の覚醒が始まる俺の耳に聞こえてくるこそばゆい言葉、何かヤバい!

 「後は私の血を先輩に捧げれば、二人は正式なパートナー♪ つまり夫婦♪」

 完全に意識が戻った俺の目の前には、ピンクパープルのアシメショートな髪の少女が瞳を閉じてキスをしてる姿。

 

 ……ドクン! 少女から口移しで何か変な味の液体を入れられると心臓が大きく鼓動を上げた。

 血流と同時に俺の脳内に初めて知る情報が流れ込み、瞳には暗い森だのおかみに変身する人間達の集落と言った光景が映画のように再生される。

 そして俺は、自分が見たのは今俺にキスをしている少女の記憶と情報。

 彼女、エルザ・ウルフムーンと血の契りを交わしてパートナーとなった事を認識した。

 少女が瞳を開くと紫色の瞳と目が合い、彼女が顔を離す。

 「初めまして先輩♪ 貴方のパートナー、エルザ・ウルフムーンです♪ 末永く、死後も来世も宜しくお願いします♪」

 「……宜しく、俺は日向晴希って知っているか」

 俺はエルザと挨拶をする、何か死後も来世もとか言われた気がしたがどういうことだろう?

 「ええ、血を取り込み合うペアリングの儀式で先輩の情報は全て刻みました♪」

 「わかったけど、俺の上から降りてくれないかな?」

 俺は保健室のベッドで横になっている、エルザはそんな俺の上に乗っている。

 セーラー服の美少女にのしかかられてるって、人生でありえない経験だわ。

 「では、もう一度先輩と私でお互いの血を味わいあってからと言う事で」

 一瞬でエルザの両腕が肥大化し銀毛に覆われと獣人化する。

 「ちょ! そういうのは家でしような!」

 俺は再びエルザと口移しで互いの血を交換した。


 そして改めて校長室へと呼び出された俺達。

 「お楽しみだったようだな」

 「お楽しみは事件を片付けてからと、お預けをされてしまいました♪」

 「ふむ、日向君は慎重なのだな?」

 「いや、そう言う事は良いから事件について話して下さいよ!」

 俺は校長に怒鳴った。

 「よかろう、場所はこの街の郊外にある廃教会で敵は吸血鬼だ」

 校長の話に俺達は身構える。

 「じゃ、今から行って寝起きを襲えと言う事ですね」

 「物分かりが良いな、エルザ君の手綱は任せたよ」

 「先輩は私が守ります!」

 「うむ、成果を期待するよ♪」

 話は以上だと俺達は校長室を追い出された。


 そして夕方、俺とエルザは戦闘用の装備に着替えて赤レンガ造りの塀で囲まれた

廃教会の入り口に立っていた。

 「先輩、退魔スーツ姿も素敵です」

 「俺はあまり好きじゃないんだよなこれ」

 俺とエルザは、アメコミみたいな全身を包むプロテクター付きのレーシングスーツ

を着ている。

 色は俺が白でエルザが黒、支給品だから仕方ない。

 ウェストポーチから結界札を取り出して塀に張り付ける、これで魔物は外に出られないし通常の人間達にもないが起きているのか全く認識されない。

 「臭いがします、行きましょう先輩!」

 「わかった!」

 俺がエルザについていく形で突入する。

 血を交わしたペアリングの儀式は、お互いの知識や記憶などの情報だけでなく魔術や身体能力などお互いの異能力もシェアできるので俺はエルザについて行けていた。


 突入した途端、周りの景色が薄暗い石造りの壁や床に変わる。

 「異空間化か、おそらく吸血鬼の城だろう」

 「先輩の異能のおかげで暗い所も昼間みたいに見えます」

 エルザが感心する、俺の異能『太陽神の恩寵』の効果の一つだ。

 やがて俺達は広間に辿り着く、ファンタジーの王様との謁見の間だ。

 「よくも我が居城に入り込んだな人間ども? 犬と……そこの小僧は何者じゃ!」

 玉座に座って俺達を見据えるのは黒のゴシックドレスに身を包んだ吸血鬼の少女。

 「私は先輩の犬です! 先輩は太陽神の御子、半神です!」

 エルザが俺の素性を告げる。

 「と言うわけで、俺はお前の天敵だ滅べ!」

 俺の瞳に紅炎が灯り、吸血鬼へと向かい炎が波を打って襲い掛かる!

 「おのれ、我が貴様ら小僧共にやられてたまるか!」

 吸血鬼が蝙蝠の群れを呼び出して盾にする。

 だがそんな物は一時しのぎだ、蝙蝠の盾は俺の炎で燃え尽きた。

 「私もいますよ、先輩の力を使わせていただきます!」

 四つ這いになり、軽トラックサイズの燃る炎の狼となたエルザが突撃する。

 「な! うぎゃ~~~~!」

 自分が負ける事や、蹂躙される事など思いもよらなかった顔をした吸血鬼の少女は

オーバーキル過ぎる炎の咢に飲まれて消滅した。

 

 空間の主が滅んだ事で、周囲がぼろぼろになった礼拝堂へと姿を変える。

 エルザも人間の姿に戻っていた。


 「任務完了ですね、先輩♪」

 「ああ、帰ろうか?」

 「嫌です♪」

 エルザが俺を抱きしめる人間の姿でも強い力だ。

 「嫌って、何がさ!」

 「折角教会に来たんですから、二人きりの式をしましょう♪」

 「待って、ステイ!」

 「待ちません♪ 永遠の愛を誓います、イエスです♪」

 俺は抵抗できず、エルザに唇を奪われなし崩し的に結ばれる事となった。

 この日を切欠に、俺とエルザは退魔士カップルとして生涯を共にする事となった。

 

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後輩の人狼少女が俺を尊いと慕ってくる ムネミツ @yukinosita

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