「おっぱいに貴賤はない!どうしてそれがわからないんだ!?」と言われながら戦う彼らは『尊い』ですか?

半濁天゜

第1話

「やめるんだビッグ・ニュウマン! ロリーニン・ツルペタスキー! 君たちが戦う理由なんてない!」

「うるせぇ、コウモリ野郎は引っこんでろ!」

「信念なき傍観者め! 心に愛なき者は去るがいい!」


 ……駄目だ。もう二人を、この戦争をとめられないのか……。


 ビッグが駆るのは、十メートル立方のお椀型、いや巨乳型ド級戦闘機。大型の対消滅炉が生む高火力と、バリア・πパイフィールドによる圧殺戦闘が持ち味だ。今日の動きも見事と言うほかない。


 だがロリーニンもその全てを華麗にかわし、反撃の糸口を探っている。直径十メートルの薄いまな板、いや貧乳型戦闘機は、被弾面積が小さく機動性でビッグ機を凌駕している。


 両陣営の全てを賭けた、エースパイロット同士の決闘。もしこれが試合なら、何時間でも観戦していたい、素晴らしい戦いだった。


 そんなところに僕が割ってはいって二人をとめられるのか? ……くそぉっ!


「おっぱいに貴賤はない! どうしてそれがわからないんだ!?」


 コンソールを叩きつけ、暗い宇宙に叫んでも、いまは瞬く星すらみえなくて……。





 決闘がはじまって三時間あまり。このまま遠距離戦をつづけても、互いにエネルギー切れを待つばかり。


 持久戦なら小生しょうせいのほうが、大食いなビッグ機より有利だろうか? ……そんな無様な戦いを、彼女たちにみせるというのか?


 否!! 断じて否である!


 小生は彼女たちを、そのうつし身たるこの機体、Usウスーイ-72を愛している。それを信じずしてなにが愛だ? なにが信念だ!?


 戦法を、一撃離脱によるゼロ距離射撃に切りかえ勝利するべし! ジワジワと間合いを詰めながら、突撃のタイミングを計る。


 するとビッグもπパイフィールドを解く。こちらの意図を察し、火力にエネルギーを集中させるか……、


「敵ながら見事!」


 小細工をやめ、ただ距離を詰めることだけに専心せり……っ。そして……?


 すれ違いざま全火力を敵機に叩きこ!? もうとした刹那、凄まじい振動に襲われる。


 迂闊うかつっ! この数瞬すうしゅんに感じた違和感の正体を理解する。ビッグがエネルギーを集中させたのは火力ではなく推力だったのだ。いまの振動は奴の体当たりによるものか。


 敵はこちらより遙かに鈍足、その思いこみが小生の目を曇らせたのだ。直感はちゃんと告げていたのに、奴の速度が速すぎる、と……。


「HAHAHA! ついに捕まえたぞ。自分に自信がないから、コンプレックスのある貧乳プーア・ブーブとしかつきあえない。そんな腑抜ふぬけにオレさまが倒せるものかよ!」


「哀れなり。自信がないのは貴様のほうだ、ビッグ。内心では自分がパートナーより劣るのではないか? 抜かれるのではないか? と怯え、虚勢を張りつづけている。本当は巨乳が怖いのであろう? そこに安らぎも癒やしもありはしない。なにもない虚飾の世界よ!」


「黙れ、傷をなめあう負け犬どもがぁ!」

「仮に傷のなめあいだろうと、小生たちにはその絆がある。互いが必要なのだと信じあえる愛があるのだ!」


「黙れええええぇぇぇぇぇ!!」


 ビッグ機の主砲が暗い宇宙を切り裂いた。互いに密着しているため、射線軸があわず直撃は免れたが、Usウスーイ-72の後部装甲が2割ほど溶けだしている。


 だが、この隙を見逃すほど小生は甘くない。ビッグ機に取りつき、内部に侵入していた。


「決着はこの拳でつけてやる。首を洗って待っておれ!」

「上等だ、叩き殺してやるからとっとときやがれ負け犬が!」





 みたいな感じのアニメをみながら幼なじみの子が言った。


「ああ~、ビグ×ロリてぇてぇ~」


 ……マジですか!?


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KAC20218

お題「尊い」

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