うちの可愛い妹を見て欲しい

かんた

第1話

「お姉ちゃん、一緒にゲームやろ?」


 夕食もとって今は家族で団欒をしている時間、春休みで翌日もなんの予定もない妹が姉に話しかけていた。


「んー、ちょっと待って~」


 しかし、彼氏持ちの我が家の姉は、今はどうやら彼氏さんとやり取りしているご様子。

 中々妹に構ってあげようとしていません。


「お姉ちゃん~、私と彼氏さんのどっちが大事なのー! 妹でしょ!? わたしをもっと大事にしてよぉ!」


「もう少しだけ待ってって、妹ちゃんも大好きだから」


 そう言って妹の方も向かずに仰向けで寝転がりながらスマホから視線を動かそうとしない姉に、待ちきれなくなったのか妹が姉の上に覆いかぶさるように抱き着いて行った。


「ちょっと!? ちいちゃん、苦しいって!?」


「構ってくれないお姉ちゃんが悪いんだもん! もっと私を構えー!」


 苦しそうに暴れ始めた姉と、それでも離れようとせずに、むしろしっかりと抱きしめた腕に力を込めて姉の首元に顔をうずめてしまった妹がキャイキャイと騒ぎ始めてしまった。


「参った! もう離してー!」


 しばらく二人で騒いでいたと思っていたら、いつの間にか姉が降参してスマホの電源を落とし妹と一緒にテレビゲームを起動し始めていた。


「よし、弟よ、ゲームを準備するんだ! マリ〇ーやるよ!」


 そう言って近くにいた弟にゲームの準備をさせながら、妹は姿勢を変えて座り込んだ姉の背中から抱き着く形になっていた。

 もはや特に何も言うことは無くなっているのか、姉も何も言うことは無くなっているのか仲睦まじくテレビの画面に目を向けてゲームの準備を進めていた。


 それからはしばらく、仲良く家族でゲームを続けて一時間ほど経ったところで、


「あんたたち、そろそろ風呂入って寝なさいよ」


 母から声をかけられた。

 流石に何時間もゲームをしていても怒られるだけだと皆分かり切っているので、風呂に入る準備をし始めたのだが、


「お姉ちゃん、一緒に入ろ!」


「狭いからヤダ。私先に入るから」


 お姉ちゃん大好きな妹が一緒に入ろうと駆け寄っていったが、うちは特に風呂場が大きいというわけでもなく、二人も入ったら身動きがとりづらくなるので、姉は即座に拒否して一人入っていってしまった。


 落ち込んでいるのか、と様子を伺ってみるも、何やら静かにしていると思ってそちらを向いてみると、いつの間にか妹の姿は無く、勢いよく浴室の扉を開く音と、姉の絶叫が響いてきた。


「ちょっと!? 狭いから嫌だって言ったじゃん!?」


「もう脱いじゃったから出れませーん! 大人しく私と一緒にお風呂に入ってくださいー」


 そんな声が聞こえて来たかと思うと、再び扉の閉まる音が聞こえてきて、すぐに姉も叫ぶのを止めて楽しそうに身体を洗っている音が聞こえてくるのだった。



 風呂から上がった二人は、髪を乾かして肌の手入れをして、と気が付いたころには日が変わりそうな時間になってきていた。

 そのまま眠そうな顔をして寝室へと行く二人を見て、私もそれからお風呂に入り、寝る支度を完成させてから妹たちも寝ている寝室へと入っていった。


 そこには、最初は別の布団で寝ていたのだろうが結局は二人で同じ布団に入って、お互いに寄り添いながら眠る姉妹の姿があるのだった……。

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