布団から出れない僕の気分転換。

納人拓也

お話を読むのが難しい。

 年々「話を書く」っていうのは出来ても「話を見る」が出来なくなってきてる。新しい知識は入れても物語を入れるスペースっていうのが、僕の中で失われてる。

 そのせいか、他人の物語を読む事そのものが苦痛に感じたり。読めないって訳じゃなくて、興味のない話に向ける気力を出すのが難しくなったって感じだ。


 長編の設定を詰め込む元気が無くなったり、下ネタやコメディに白けたり付いて行けなくなったり、恋愛物みたいな優しい世界は自分がハッピーじゃないからって見る気が無かったり、元気の出るお話です! って銘打ってる話ほど、なんか見ると元気が無くなる。

 ごめんね、君達のお話が悪いって事ではないんだ。読む気分も失せるような、明らかにマナー守らない人以外はね。これは一○○パーセント言える。今の僕の物凄く落ち込んでる気分の問題なんだ。


 矛盾してるけど、こういう時の気分転換で落ち着く話は「無味無臭」なんだ。山と谷がほんの少しで、物語の登場人物が足音を立てない。だけど――独り言にちょっと付き合って貰う感じの話。

 刺激臭より、花の香りより、高い香水より、自分の部屋のにおいの方が僕は好きだ。床と埃とベッドと、本とゴミの臭い。ゴミは毎週捨ててるけど。だからかな、今の僕は、元気のない僕には物語がある方が辛いんだ。

 猫や犬みたいに柔らかくて暖かい存在は撫でたり見たら癒されるけど、黒と白の文字の世界で登場して貰うのは難しい。結局、僕は今、頭の中にそうやって架空のペットを飼う事も出来ないし。

 だから、なんというか、意味なんてない話も意味はあるんだよ。今の僕にとっては。意味分からないよね? 意味のある話が苦手だなんてさ、僕も今の僕が訳分からなくて困ってるよ。

 このお話、ちゃんと伝えられるかな。もし上手く伝えられなかったら、ごめんね。布団の中から出られない時に書いたんだ。

 朝の日射しが射し込んでて、目覚まし時計もきっちり掛けて、ちゃんと朝に起きたのに起き上がれないまま、一時間が経過してる。たまにあるんだ、こういう朝。

 だからこうやってスマホ開いて、意味のない話だろうとタップして文字を残してるんだ。何か意味があるのか、って訊かれると「たぶん無いよ」って誤魔化すように笑って答えるしかないのだけど。

 でも今の心情を書くだけで、結構な文字が生まれてお話になるから不思議だよね。それが楽しくて、何か伝えたくて、たぶん今もこうして、スマホ取り出して文字を打ってるんだ。

 でもそろそろ指が疲れてきたから、カーテンを開けに行こうと思う。始まりも唐突なら終わりも唐突だよね。でも意味なんかないから、こんな話。明日になったら皆忘れる。でもきっとそれでいい。

 さて、今日は昨日作ったハンバーグの残りでも食べて、外に出ようかな。

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