第7話 驚愕のヴィンセントと後始末

「…き…、貴様…!?私にそんな無礼な口を聞いてただで済むと…」


 男は、大きな揺れに困惑しながらも、髪をかき上げつつ、俺を睨みつける。


「あぁ?人が黙って聞いてりゃあ調子こきやがって…。挙句うちのかわいい妹に暴言吐いて泣かせてくれただとぉ?どう落とし前つけてくれるんじゃあ、こらぁ!?」


 ズドン!!

 

 無属性の魔力の奔流が、男に向かってぶつけられた。

 ただただ思いっきり魔力を込めた強烈な威圧。


「ヒッ!…こ、これは…!?」


 男は座っていたソファーに手を付き、産まれたての小鹿のように震える身体を支えながら、なおも悪態をつく。

 どうやら古参の公爵家兼王国騎士というのは伊達じゃないらしい。


「…き、貴様…。これは私…いや、我が公爵家に対する挑戦だな。…よ、よーし、このヴィンセント・グレイトウォールが受けて立ってやろうではないか。よ…よいのだな、グレンフィード・プラウドロードよ?」


「はぁ…」


 父はがっくりとうなだれてこうべを垂れ、大きくため息をつきながら言う。


「ヴィンセント税務査察官殿…。もはやこうなっては仕方がありません。私は当主として、先程あなた様がおっしゃったとおり、我が息子たるレインフォードに全てを託しましょう。どうか、お怪我だけはなさいませぬよう」


「…え、と…とめないのか…?」


 男は泣きそうな顔で懇願するように父を見ている。


 コイツ。

 偉そうに悪態ついたり、きゃわいいエリーに上等かましてくれたくせに、父に俺を止めてほしかったのかよ。

 まあ今さら止められんし、止まらねぇよ。

 父もグッジョブだよ、ちょっと口元が笑ってるのは気になるけどな。


 俺はなおも魔力を集中させながら、エリーがフリードに連れられて部屋を出ていく様子を見届けた。

 もう遠慮はいらないよね?


 ブワァ!!


 俺はより一層の魔力を、男に向かって真っ正面から叩きつける。


「ヒゥ…!?」 


 男は腰が抜けそうになるのを何とか我慢しているようだ。


「よ、よーし。そこまで死にたいのならよかろう!公爵家でも税務査察官でもなく、一介の王国騎士として貴様を誅殺してくれるわ!」


 男はそういうと、突然右手を前に出し、そこに左手を添え、ブツブツと何かつぶやき出した。

 なんだこれ、呪文の詠唱ってやつか?


「我は告げる。其の氷の刃は怨敵の喉元に」


 男が詠唱を終えると、周囲の気温が少し下がったように感じる。

 水魔法…からの氷結攻撃か?

 いや、それにしてもこれは…


「死ぬがいい!ブリザード・アロー!!」


 男は落ち着いたのか、再びニヤリと笑うと、その右手から発せられた氷の矢を俺に向かって撃った。

 氷の矢…だよな?


 シュウ…


「…え…?」


 男は目を見開き、言葉を失う。

 自信満々に出した氷の矢っぽいものは、俺に当たる前に、ふわっと消えてしまった。

 恐らく俺のまとう魔力にかき消されてしまったらしい。

 あまりにも弱そうで、はじく気にもならなかったのだが。


「き、貴様…。小賢しい真似を…」


 男は歯ぎしりをして俺にすごんでくるが…、いやいや、俺なんにもしてないよ。

 ただ立ってただけだよ。


「私を本気で怒らせたな…。死ぬがいい!」


 なんかさっきも似たようなこと言ってなかったっけ?

 父が下を向いてちょっと笑っている様子が横目に見える、おい。

 それにしても男は意外に弱いし、父は何だか嬉しそうだしで、ちょっとトーンダウンしてきたぞ。

 まあエリーも怪我をさせられたわけではないし?


「我は告げる。其の氷は極地の果てから我が元に。我が魔力を糧として、ここに氷結の地獄は顕現せり。されどその刃は怨敵の喉元に集いてこれを切り裂かん」


 キュオオオ…

 パキッ!パリン!!


 男は、今度は右手を上に向け、再び詠唱を始めた。

 ぐんぐんと周囲の気温が下がっていく。

 応接間に置かれた皿やらなんやらの調度品が凍りついて砕けていく。

 さっきよりも強力な魔法っぽい。

 あと喉ばっかりだな。


「私に盾突いたことを後悔するがいい!死ねぇ!!氷結地獄・コキュートス!!」


 男はそう叫ぶと、左手でまたもや髪をかき上げ、天に掲げていた手を勢いよく振り下ろす。


 その途端、さっきとは比べ物にならないぐらいの量と鋭さを帯びた氷の矢が、四方八方からもの凄いスピードで俺に襲いかかる。

 襲い掛かる…のだが。


 シュウ…


「…あ…」


 氷の矢は再び俺に当たる前に消えてしまった。


 男はこれ以上ないくらい、大きく目と口を開く。

 おいおい、そんなに口を開いたら、顎が地面に刺さっちまうぜ?


「…く…、くそ…!かくなる上は…!!」


 男は一転、腰から提げた高級感たっぷりの剣を抜きはらい、瞬時に俺を袈裟斬りにする。

 おお、さすがは騎士の剣撃、けっこう鋭いな。

 稽古時の父の剣に比べれば、ハエが止まりそうではあるが。


 男の発する斬撃と同時に、俺は自分の左手を無属性の魔力で強化するとともに、そこへ火魔法を合成しつつ、振り下ろされた剣を素手で掴んだ。


「…っな!?なんだと!?」


 ジュワ…


 男は驚愕の表情を浮かべる。

 そして同時に握った剣は俺の左手の中で溶けだした。

 鉄の精錬時みたく、赤く輝くマグマのようになって地面にこぼれ落ち、うちの大事なカーペットや床を焦がしていくので、ちょっと慌てて消火する。

 火事になったらどうしてくれんだよ、お前。


 男はヘタッと腰を抜かし、その場に崩れ落ちて尻もちをついた。


「ヒィ…、バ…化け物…」


 俺は、真っ青な顔をした男に言う。


「失礼ですね、人のことを化け物だなんて」


 俺はゆっくりと歩みを進めながら、優しく男に言う。


「では、うちの可愛いエリーを泣かせていただいた分、きっちりと代償を支払っていただきましょうか?得意なんでしょう?税金の取り立てとか。ヴィンセント税務査察官殿」


「ヒッ…」


 俺は気怠そうに男の目の前にしゃがみ込み、重ねて男に言う。


「そうですねぇ…。あなたの右腕でも貰ってしまいましょうか?ほら…、ポトン!!っと落とせそうですよ」


 キュィィィィィィン…!


 俺は右手の人差し指の周りに風魔法を集中させ、円形を形作りながら、指でクルクルと高速回転させ、エンジンカッターのようにして見せる。


「…ヒィィ!」


 男は言葉にならない言葉を発しながら、自分の左手で強く右手を押さえる。


 俺は男にずいっと顔を近づけ、続けて男に言う。


「あとは、うちの家具とか、カーペットとか、あなたの剣とか…。壊したものの責任もちゃんと取ってほしいですねぇ。あっ、そうだ。氷がお好きなんですよね?」


 俺は風魔法と同時に、今度は左手に水魔法を集中させながら、刀身が溶けて柄の部分だけになった男の剣を拾い上げる。

 そしてそこに超低温の空間を展開すると、剣は見る見るうちに白く凍りついていく。


「極限まで温度が下がった物質ってどうなると思いますぅ?」


 サラサラ…


 凍りついていた剣は、そのままキラキラと輝きながら、美しい塵となって散っていく。


「いっぺん試してみますぅ?」


 俺は男を下から見上げるように、ドスの効いた声で男に言う。


「…剣は…そっちが…」


 ドサッ。


 あっ。


 ついに男は気絶してその場に倒れてしまった。

 股にはちょっと臭いのする大きなシミを作って。

 ま、これでよしとしてやるか。

 父からもじっとしてろって言われてたしな!


「父上、すみません。つい、ちょっとだけカッとなってしまいました」


 父はニヤリと笑うと、俺に向かって親指を立てた。


「よくやった。お前がやらなければ、最終的には私がぶん殴っていたかもしれん」


「坊っちゃま…。なんと雄々しい…」


 フリードはハンカチを出して目頭を押さえていた。


 さてと。

 どうやってごまかそうかな。


 ※※


 ややあって…。


「はっ!わ…私は!?」


 男が来客用寝室のベッドで目を覚ました。

 ベッドの横にはかわいい花も飾ってある。


「おお、目覚められましたか、税務査察官殿」


「大丈夫ですか?すごく心配いたしました」


「誠に勝手ながら、お召し物は多少汚れておりましたので、着替えさせていただきました」


「…ヒィ!…え?…あ、いや…。私…は?」


 男は状況が飲み込めないのか、きょろきょろと周りを見回して困惑している。


 そこへ。


「ヴィンセント税務査察官様におかれましては、会議中に急に倒れられたと伺っております。さぞや疲労が溜まってらしたのでしょう。お身体はいかがでしょうか?」


 男に対し、聖母もかくやの笑顔で話しかけるうちのゆるふわ母。

 さっきつらい目に遭わされたエリーは俺の後ろに隠れている。

 そうそう、そうやってお兄ちゃんにしがみついとき。


「そ…そうだった…のか…?」


 男の目は家族を見回したり、花瓶の花を見たりと忙しい。


「いずれにせよ、税務査察官殿のお身体が第一でございます。本日は我が家でごゆるりとお寛ぎください。お口に合うかはわかりませぬが、夕食も用意させていただきます」


「うわぁ、光栄ですね!父上!!」


「うむ、公爵家の御子息と夕食をともにできるなど、プラウドロード家末代までの栄誉だな」


 わっはっはっはっはっ!


 家族みんなで男をヨイショして盛り上がっていく。

 ベッドの中で、訳がわからんという顔をしながら、みんなに合わせてひきつった笑いを浮かべてる姿はちょっとアレだな。


 少し時は遡るが。

 男が小便漏らして気絶した後、プチ家族会議をした俺たちが出した結果は「会談中に勝手に過労でぶっ倒れたことにしちゃおう」というものだった。

 一見すると「いやいや、そんなバカな」と思うかもしれないが、俺は意外に勝算ありと考える。

 理由は二つ。


 まずコイツが、きっと「プライドの塊」という点だ。

 若くして色んな肩書を持っているこの男は、周りからチヤホヤされて「俺TUEEEE!」などと考えていたはず。

 そんな男が、たかが10歳の男の子に一喝された上に小便まで漏らしました、などと噂が立つのは絶対に避けたいはずだし、そんなことになれば、せっかく築いた今の地位が全てパーになるだろうからな。


 二つ目は、王国の特使となり「公務として税金の取り立てに来た」という点。

 コイツは性格はあれだが、おそらく仕事はかなりできる奴なのだろう。

 そもそも税金の話になると仕事人のような目になっていたし、書類を読む速さや、それを元に税額を決定した算術等についても正確で、かなり手馴れたものだった。

 加えて税務査察官なる大層な役職と公爵家という格式高い家柄も相まって「失敗は許されない」という存在なのだ。

 そんないわゆる高級官僚が、「相手のお宅の娘さんに暴言吐いたら親御さんたちにかまされたので、税金を取れずに帰ってきました」なんて、口が裂けても言えるわけがない。


 まあそれでも駄目だったら、その時はその時だ。

 実はかわいいエリーを泣かされたことで、父も相当頭にきていたらしい。

「お前がやらなければ、私が首をはねていたかも。わっはっはっは」などと言っていたしな。

 やっぱり頼りになるぜマッチョ父は。


 ※※


 男はまだビクつきながら、我が家のダイニングにやって来た。

 頼むから、お化け屋敷でビビる子供みたいに歩くのはやめてくれ。


「おお、税務査察官殿、どうぞどうぞ、お掛けください」 


 父が普段見せないような笑顔で男を招く。

 俺も続いて、男の椅子を引いてみせる。


「さぁ、どうぞ!」


「ヒッ…、ど、どうもありがとうござい…ます」


「大丈夫ですか?まだ些か混乱しているように思われますな。どうぞ狭苦しい場所ではございますが、我が家と思い、ゆるりとしてください」


「は、はぁ…。失礼する…いたします」


 男は先程とは打って変わって平身低頭な様子だ。

 どうやら相当クスリが効いてしまったらしいな。


「さぁ、フリード」


「は、ただいま」


 父がパンパンと手を叩くと、フリードは素早く夕食を運び出す。

 準備万端、歓迎パーティの始まりだ。


 次々に運ばれてくるうちの郷土料理。

 彩り美しい野菜や果物や渡り鳥の肉料理、そしてトマートという、前世のトマトそっくりの野菜を煮込んだ、ミネストローネなどなど。


 それは一つひとつが、しっかりと丁寧に作りこまれており、食欲をそそる。

 さて、後は味を気に入ってもらえるか、だな。


「…」


 男は料理を前に固まったまま、口を付けようとしない。

 もしや、毒殺されるなんて思っているのか?

 ないない、そんなことして何になるってんだよ。


「父上」


 俺が父を見ると、やはり父も同じことを考えていた様子で、フリードもすぐにそれを察したのか、ササッと全員のグラスにそれぞれ同じ水差しから水を注ぐ。

 同じ水差しからグラスに水が入れば、毒殺の意思はないことが伝わるはずだ。


「うん、今日も我が家の水は美味いな」


「ええ、グレン。おいしいわね」


 両親がそれとなく水を飲みはじめると、男も若干おどおどしながらも、グラスに口をつけた。

 そして。


「こ…、これは…。」


 うちの水を一口飲んだ男は目を見開き、その後一気に水を飲みほした。

 相当喉が渇いていたのだろう。

 上から下から色んな水分出てたしな。


「お口に合いましたようで、恐悦至極に存じます。さぁ、料理もどんどん召し上がってください」


 父はそう言うと、率先して運ばれて来た料理を食べだした。

 いつもながら、豪快な食べっぷりだぜ。

 あ、母も負けてないな。


 男は最初のうちはビクビクソワソワしていたものの、俺の実験畑で収穫したトマートを見ると目の色を変えた。

 どうやら食べるか食べまいか迷っているようだが…、あっ、本能が理性に勝ったらしい。


 うちのトマートを一口たべた男は、さらに驚愕に目を見開いた。


「な、何故トマートが、このように甘い!?…のでしょうか?」


 なるほど、あんたトマートが大好きだったんだな。


「はっはっは、査察官殿はまだ疲れが取れていないご様子ですな。我々に丁寧な口調など不要でございます。レイン、御説明を」


 おっとご指名だな。


「税務査察官殿」


「ごっほん、ごっほん!…うっ…うん?」


 俺が話しかけると、男はちょっとむせながら、ビクついた様子で返事をした。


「この農作物は、すべて実験用として、私が水魔法で育成したものとなります」


「…ほ…ほぉ、水魔法で農作物の育成を?」


 男の目の色が変わった。

 やり手のお役人という肩書は本当なんだろう。

 さっきとは打って変わって自分を取り戻したように、真剣な目つきになった。

 指で髪もいじり出したし。


「はい、私は普通の水と、水魔法で作り出した水との二種類の方法で作物を育てています。その結果、明らかに私の水魔法で育成した農作物の方が、味や品質、保存期間そして成長速度においても優れていることが判明しております」


「…そ、そんなことが。しかし下々が水魔法で作物を育てることは、そこまで珍しくはないだろう?…だがトマートがこんなに美味くなるとは聞いたことがない。その違いはどう説明する」


「すみません、そこに関しては、未だ仮説を立てることしかできておりません」


「いい。忌憚の無い意見を言ってくれ」


「はい、おそらくは魔力の密度などが大きく影響しているのではないかと考えております」


 男は顎に右手を当てながら、左手で髪をかき上げた。

 おっ?若干調子を取り戻してきたか?


「魔力の、密度…?」


「はい、税務査察官殿が行使された水まほ…おっと、大変すぐれた水魔法を使われることは、このエリーゼ地方にも伝わっております。その上でお伺いしますが、魔法を行使する際の詠唱などを含め、魔力の密度に変化をつけたり、発生させる水そのものの清濁にかかるイメージなどはされていらっしゃいますでしょうか?」


 …ウ…ウォッホン…!

 男はちょっと咳き込みながら答える。

 ぷぷっ。


「…いや、魔法は詠唱により発動させるものだろう?いかに早く正確に詠唱するかを重視するため、余計な考えは挟まないな。加えて魔力総量というものは生まれ持った資質が全てだ。従って密度云々という話は、まるで聞いたことがないが」


 ふむ…。イメージはしない、か。

 俺にはピンとこないが、魔力を体の中で練り上げたりはしない、と。

 そういえば、母が魔法を使う時も、あんまりそういう様子はないな。

 なら詠唱そのものが、魔力に関係なく魔法を自動的に行使するためのトリガーのようなものなのか?

 …うーん、まあこればっかりは今は答えは出んし、要検証だな。


「承知いたしました。まだまだ想像の域を出ませんが、どうやらその辺りに鍵がありそうな気がします。貴重な御意見をありがとうございました、今後とも実験を続けます」


 俺はしっかりと頭を下げた。


「そうか承知した。ところで話は変わるが、…課税の件について、なんだが」


 男は髪をかき上げながら、父と俺を交互に見る。

 場が少し緊張した空気になるが、男から意外な提案が。


「…今回の課税については、今しばらく様子を見ることとし、一旦保留にしようと考えている」


 意外な言葉に目を丸くした父が言葉をつなぐ。


「…と、おっしゃいますと?」


「言葉の通りだ。私が過労・・で倒れてしまった先刻までは、作付け面積に応じた相場通りの課税でよいと考えていたが、先程の農作物育成に関する話や、実際にこれを食した結果を考えると、そう簡単な話ではないと理解した。…特にトマートなど…」


 おぉ、なんと!

 コイツ意外に分かる奴じゃん!!


「…ど…どうした?レインフォード・プラウドロードよ…。些か近いが…」


 おっと!

 俺としたことが思わず身を乗り出しちゃったぜ!

 失礼しゃしたー。


「ま…まあ、このエリーゼ領の農地に関してはまだ未完成ということもあるし、他領の作物とはかなり味も質も違うように感じる。それらを踏まえ、農地の面積等による画一的な課税は妥当ではない、と私は判断した」


「…ありがとうございます」


 父は深く深く頭を下げ、心からの謝辞を述べた。


「か…勘違いするな、この領地を優遇しているわけではない。全ては王国の利益を熟慮した上での決定だ」


 どんな心境の変化があったのかは知らんが、なんかすごくいい方向に向かってる気がする。

 ここは押しどころ!と考え、俺も笑顔で口を挟む。

 いけいけどんどんってやつだ!


「ありがとうございます!では実験の経過を確認していただくため、時折農作物の検体を送らせていただきますので、税務査察官殿の御協力と御意見を頂けないでしょうか」


「…う、うむ。実験結果の確認なら仕方ない、協力しよう。特にトマートの確認に協力しよう」


 えらくトマート気にいってんな!

 ま、うちのは絶品だからな、ふっふっふー。


「おにたま、みんな仲良しになって、よかったね」


 最初はこわごわ男を見ていたエリーだったが、慣れてきたのか、かわいらしい一言で、場の雰囲気を一気に和ませてくれた。

 ありがとな、エリー。

 あんなことがあって怖かったろうに、色々気を遣ってくれてるの、お兄ちゃん知ってるぜ。


 会食はその後も順調に進んでいった。

 俺は男からこの国の税務制度について詳しく聞いたり、俺が生きていた世界の税制などをちょこっと話したりしながら、深々と夜は更けていくのだった。

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