序章:5 三本腕のルレルテ

 探偵事務所ルペワフルは、一階に受付や待合室の類いがあり、二階が所長室と各探偵の場所スペースになっている。場所スペースと呼ぶのは、簡単な間仕切りだけで区分けしているだけだからだ。

 階段を上がると、扇風機シーリングファンの羽音と大型の除湿器の駆動音が部屋を漂っていた。

 我々は自然と姿勢を正し、階段近くの場所スペースに足を踏み入れた。

「失礼します。おはようございます。師匠」

「わん」

「おはよう」

 探偵フォリオ・ルレルテ。

 西大陸リンドレアンでは珍しい使徒種クピトの女性で、3つの目と腕を持つ。本当は腕は4本だが、過去の仕事で失っており、そこから"三本腕のルレルテ"の異名がついた。

「珍しいですね。どうしたんですか?こんなに早く」

「わん」

「予感がしてね」

 お師匠は額の目だけを開いて微笑んだ。

「予感?」

「ええ。…そろそろね。応対頼むわ」

「何のですか?」

 その直後、電話が鳴り響いた。

「それのよ」

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