第4話 ご褒美

 ライラとイリナは、あれから毎日会ってお互いの情報を交換をしていた。


 場所はライラがいつも使っている自習室である。この部屋は防音が施されているので、内緒話にはうってつけなのだ。


「これが買収された人達の名簿ね」


「ありがとう。助かるわ。不審に思われたりしなかった?」


「全然。協力してくれる人達のことを私も把握しておきたいからって言ったら、疑いもせず渡してくれたわ。チョロいもんよ。ところで、これを手に入れてどうするの?」


「買収し返すのよ。お金で釣られた人なら更に高いお金で。地位や立場を約束された人ならより高い地位や立場を。脅されて協力した人ならその憂いを取り除いてあげる。と言った感じで」


「そんなこと出来るの?」


「公爵家が持つ財力と権力をフルに活用するわ。大丈夫、任せて。交渉事は得意だから。伊達に公爵家で揉まれてないわ」 


「あ、あんたを敵に回さなくて良かったと心からそう思うわ...」


 イリナは若干引きながらそう言った。


「誉め言葉と受け取っておくわね」


 そう言ってライラは怪しい笑みを浮かべた。


「あ、そうそう、アイツらが言ってたことの中に、一つ気になっていたことがあったんだった」


「どんなこと?」


「ほら、隣国の王女様の話」


「あぁ、ブレンダ王女ね」


「そうそれ。そっちは大丈夫なの? なんかあの悪党はすっかりその気になってるみたいだったけど、相手は傾国の美女って言われるくらいキレイな人なんでしょ? そんな人があの悪党を本気で相手にする訳ないと思うし、間違いなく勝手に思い込んでるだけだよね? 失礼なこと言ったりして、ヘタすりゃ外交問題になったりしない?」


「大丈夫よ。既に手は打ってあるわ」


「さすがはライラ様...」


「イリナ、二人っきりの時は呼び捨てにするって約束でしょ?」


「あぁ、ゴメン。ライラ」


「ん、よろしい。さて次は...」


 ライラは例のノートを見ながら、


「教科書破りね」


「うん、いつやればいい?」


「ちょっと待ってね~」


 ライラは次にスケジュール帳を取り出した。


「う~ん...あ、明日の放課後がいいわ。ちょうど王妃様とのお茶会の予定が入ってる」


「了解!」


「派手にやってね?」


「任せてといて! ギャラリーを大勢集めて渾身の演技を披露するわ!」


「期待してるわね。あ、そうだ! 演技で思い出した。はい、これ」


 ライラはカバンからチケットを2枚取り出した。


「イリナが観たがってたオペラのチケットよ」


「うわぁ~♪ ありがと~♪ でもいいの? これ中々手に入らないって聞いたよ?」


「頑張ってくれてるご褒美よ。二人で観に行きましょ」


「やった~♪」


 イリナは満面の笑みを浮かべた。

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