第3話 協力体制構築

「あんたと手を組む?」


「えぇ、そうよ」


「それで私にどんなメリットがあるっていうのよ?」


「その前に、あなたは何が目的であの悪党どもと手を組んだの?」


「そんなの決まってるじゃない。王族の一員になってチヤホヤされるためよ」


「それで私が婚約破棄されるように協力したと?」


「えぇ、その通りよ」


「残念だけど、それは始めから無理よ?」


「えっ? 無理ってどういうことよ?」


 イリナは首を傾げた。


「だって企みが上手くいったとして、私と悪党との婚約が破棄されたら、その瞬間あの悪党は王位継承権を剥奪されるわ」


「そ、そんな...ウソでしょ!?」


「ウソじゃないわよ。あの悪党は妾腹なんだから。公爵家の後ろ楯がなくなったら、王位継承どころか王族としての地位も失くすことになるでしょうね。平民に落とされるか、あるいはあなた方男爵家で養うことになるわよ?」


「あんのクソ野郎がぁ!」


 本日2度目のイリナの咆哮は更なる怒りに満ちていた。



◇◇◇



「分かった、あんたに協力するわ。私はなにをすればいい?」


 少し落ち着いたところでイリナがそう言った。


「そうね...まずは今までやってきたことを全て教えて?」


「まずは、あんたの評判を下げること。毎日のようにあんたが私を罵ってるって吹いて回ったわ」


「具体的には?」


「男爵令嬢のクセに生意気よ、とか、殿下に馴れ馴れしくし過ぎよ、とか」


「まぁ、定番ではあるわね。他には?」


「廊下ですれ違う度に足を引っ掛けられたりとか、取り巻きと一緒に取り囲んで水ぶっかけたりとか、そんな虐めを受けてるってとこかしらね」


「なるほどなるほど、なんだかテンプレっぽいなぁ。ところでそういうのってあなたのアイデア?」


「いいえ、全てあのグスタフが書いたシナリオよ。私はただ演じただけ。悲劇のヒロインをね」


「なるほどねぇ。ちなみにこの後は?」


「あぁ、詳しくはこれに書いてあるわ。読んでみて?」


 そう言ってイリナは一冊のノートを取り出した。


「どれどれ...ほうほう...これはまたベタねぇ。『教科書破り』に『噴水流し』最後が『階段落とし』か。巷で流行ってる婚約破棄モノの小説そのままね。オリジナリティが感じられないわ」


「そういうモノなんだ...それでこの後、私はどう動けばいいの?」


「このまま流れに沿って進めて頂戴」


「それでいいの?」


「えぇ、ただし、全て私にアリバイがある時にやってね? そのタイミングは後で知らせるわ」

 

「なるほど! 分かったわ!」


「体張るのが多いから怪我だけはしないでね」


「大丈夫よ。任せといて」


「あぁ、それと、買収されてウソの証言を強要される人が誰か、分かるようなら探ってくれると助かるわ」


「了解! それとなく探ってみるわ」


「疑われないように注意してね?」


「えぇ、気を付けるわ」


 こうして悪役令嬢と腹黒ヒロインのタッグが結成された。

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