第22話 不撓不屈の鬼リーダー

「はい、朝のホームルームを始めます」




 俺は廊下に立ちながら、教室で行われているホームルームの様子をうかがっていた。


 なぜ、廊下で立っているのか。


 そもそもなぜ勇者養成学校に魔王である俺がいるのか。


 話はさかのぼる。






~話は遡る~




「お主ら、話がある」




「はっ、なんでしょうか?」




「さすが、魔王様ね」




「魔王様、すっげー」




「ご主人様、何用でしょうか?」




 俺の言葉に、三人娘+鼻くそ野郎がすぐさま反応する。


 まるで、忠実な部下のようだ、と俺は思った。


 ……魔王城のリビングで、思い思いの恰好でくつろいでさえいなければ、だが。




「余は問おう。……なぜ、魔人軍としての務めを果たそうとしない? なぜ、人間どもと戦おうとしないのだ?」




 俺の問いかけに、四人は顔を見合わせた。




 いや、顔を合わすな、即答しろ!




 何か考えのあってのことだろう!?


 俺が内心焦っていると、




「「「っは、明日から本気を出します」」」




 と、声をそろえて言われた。




「お主らは馬鹿か!? ……いや、バカだったな、お主らは!」




「魔王様っ!?」




「『魔王様っ!?』じゃ、ないからね、ちょっとそれ懐かしいけど、全然嬉しくなんかないんだけど!」




 俺は懐かしいなぁ、と思いつつ、そんなことを言った。




「余は命じるオーダー、今日から本気を出しなさい!」




 俺はとりあえず命じた。




「……っ! そんな、卑怯です、魔王様!」




「許せ、クロナ……」




 俺はクロナの額を指先でトン、とした。




「くぅ、本気を出さなければ……ならないのですか?」




「流石は魔王様ね……」




「魔王様、すっげー、だぞ……」




 ハナとアオイとアカリが次々に膝を折り、本気を出そうとしている。




 ……出そうとしている、というかもう、早いとこ本気出せよ。


 人類に仇なしたったらええやんけ……。


 ちょっとくらい人類さん困らせたっても、ええやんけ……。




 ……ふん、俺もすっかり、魔王がいたについてきた、というところか。




「ま……ない」




「うん?」




 クロナが辛そうな表情で、何事かつぶやいた。




「私……は、こんな、言葉なんかに……」




 クロナの内在する魔力が迸る。


 その美しき表情を苦悶に歪めつつも、瞳には力強さをたたえている。




 「絶対に、負けないっ!」




 パリンッ!




 ガラスが割れるような、高い音が響いた。




「【最上位命令グランド・オーダー】を、破った・だと……?」




「魔王様、私は……今日といわず、明日からも! 本気を出しません! 絶対です! 私はこの魔王城で、だらだらします! ここにいる三姫と、ハナクソ蛇と一緒に!」




 ろくでもないことを決め顔で宣言する馬鹿。




「「「クロナ……」」」




 よくわかんないけど、こいつらも【最上位命令】の効果が薄れていそうだった。




 なぜなら、全員がてきぱきとゲームの準備を始めてるからだ。


 なんやねんこいつら、喧嘩売ってんのか?




 俺が胡乱な視線を送っていると、ゲーム機の本体のスタートボタンを押しやがった。


 そして、みんなでワイワイアクションゲームに興じ始めた。




「もー、ハナったらハメ技使わないでよ~」




「えへへー、わかったよー」




「わー、アカリ、自爆に私を巻き込まないでよー」




「荒らしプレイが好きなんだぞー」




 なんだか、キャラがブレブレなことを言いつつ、ゲームを楽しむバカども。




 ……え、ちょっと待って。


 ナニコレ?


 俺今普通にはぶられちまったんですけど?




 そもそも、この馬鹿ども。


 絶対に人類にとって害ないよね?


 ほっといて問題ないよね?


 いいよ、こいつらポンコツだからほっとけって、勇者たちにチクったる。




 ――後は、俺という魔王の存在が問題、となるのかもしれないが。




 俺は冒険者ギルドのSS級冒険者。


 つまり、それなりの信用がある。




 なんとかなるだろうな……。




「わかった! 魔王、もうわかった! もういいもん、じゃあ、魔王勇者と仲良くするもん! ……バーカバーカ!!」




「「「「はっ! お気をつけて!」」」」




そう言いつつ、三姫臣とハナは、四人で大乱闘スポーツブラジャーズで対戦をしながら俺を見送ったのだった――。









そして、冒険者ギルドでおっさんに勇者養成学校の話を聞いて、今に至るのだった――。


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