21回目のおかわり

ムネミツ

21回目のおかわり

 目の前にはカレーライス、隣には気になる女の子。

 「さあ、いよいよ始まりました第二十一回フードファイト決勝戦!

最後のメニューはカレーライス、勝利の女神は丼王子とおかわり姫のどちらに微笑むのか? よ~~い、スタート!」

 司会者が叫び勝負が始まる。

 丼王子どんぶりおうじとは俺、杯満さかずき・みつるの事。

 おかわり姫とは俺の隣でフードファイトの対戦相手である大盛飯子おおもり・いいこの事だ。

 俺と彼女は高校は別だが幼馴染で、フードファイトの男子のチャンピオンと女子のチャンピオンであるクイーン。

 

 どちらもタイトル持ちのチャンピオン対決だ。

 「もぐもぐ♪ えへへ~♪ 私、カレー大好きなんです♪」

 笑顔で味わいながら食べる飯子、知ってるよと内心で突っ込みつつ俺も

味わいながら食べる。

 「作ってくれた人に感謝して、味わいながらしっかりいただきます」

 俺も口に出して食べる。

 「大盛選手は笑顔で、杯選手は真面目に、お互い行儀よく平らげて行きます!」

 司会者がコメントする中、俺達は三杯目を食い終えていた。


 隣の飯子は同じ料理であっても、本当に美味しそうに笑顔で食べる。

 思えば子供の頃からあいつはそうだった。

 その笑顔を見るとこっちも嬉しくなって、食事が更においしく感じられてこっちも食が進むんだよな。


 小学校の頃は俺とあいつで大食い夫婦って呼ばれてたっけ。

 家も隣で小中と一緒、習い事はあいつがレスリングで俺が相撲。


 俺が中学では相撲を辞めたリバウンドで太ったから、必死こいてダイエットしてた

頃から段々と距離ができて来たんだよな。

 「みっちゃん、一緒にご飯食べない?」

 「ごめん、俺痩せないといけないから」

 「駄目だよ、痩せるのにもご飯はきちんと食べないと!」

 「俺、栄養吸収しやすい体質なんだよ!」

 俺は心配してくれたあいつの誘いを断ってしまった。

 距離ができたんじゃない、俺が逃げたんだ。

 

 そんな気まずい中学時代を経て、あいつはスポーツ推薦で強豪校へ進学。

 俺は地元の農業高校へ進学した。


 飯子と再会したのは高一の時、賞金とステーキに目がくらんで参加したフードファイトの会場。


 こっちは必死こいて痩せた結果、何とか良くも悪くもない姿になれて高校デビューが出来たというのにあいつはどんな代謝してるんだよとばかりに胸は大きくなりレスリングはまだ続けているようで体は鍛えられた美少女となって注目の的となっていた。

 それからと言うもの、俺は大食いの素質が目覚めたのかフードファイトの大会で勝ち進みチャンピオンとなった。

 同時に、あいつもクイーンとなった。


 俺達は、中学の時の差を埋めるかのようにフードファイトの大会で一緒に飯を食うようになったんだ。


 そう思い返した十五杯目で、俺は意識を失った。

 「みっちゃん、大丈夫?」

 「……え? 飯子?」

 気が付くと、俺は病院のベッドの上で飯子に手を握られていた。

 「あれ? 大会はどうなった?」

 俺は自分がなぜここにいるのかわからなかった。

 「馬鹿っ! 私、みっちゃんが死んじゃうかと思ったんだよ!」

 飯子が怒る、何か申し訳ないようだが胃が痛い。

 「俺、お前の事が好きだけどお前に嫌われてるって思ってた」

 勝ったら告白しようなんて思っていたが今言ってしまおうと思った。

 「私だってみっちゃんの事が好きだよ、フードファイトもおばさんからみっちゃんの予定を聞いて部活の調整しながら参加してたんだよ!」

 知らなかった、道理でよく会うわけだ。

 「私、みっちゃんとまた一緒にご飯が食べたかったんだもん!」

 「ごめんな、何も気付かなくて」

 素直に謝った。

 「本当だよ馬鹿~っ! みっちゃんと一緒じゃないと、私ご飯が美味しくなくなっちゃったんだから責任取ってよ!」

 怒りながらとんでもない事を言い出す飯子。

 「わかった、取るよ俺と付き合ってまた一緒に飯を食ってくれ」

 俺は飯子と再び約束をした。


 その後、俺は飯子の学校に転校して彼女のマネージャー兼恋人となり生涯食事を共にする仲となった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

21回目のおかわり ムネミツ @yukinosita

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ