季節は巡り、それでも変わらぬ思いがある

夕日ゆうや

21回目の……

 俺が15歳の誕生日。

「今日が誕生日だね。正和まさかずくん」

「え。うん。ありがと」

 いつも隣の席に座っていた一ノいちのせ彩愛あやめが俺に話しかけてくれた。それだけだ。でもそれでも心が躍るような嬉しさがある。

「えへへへ。正和くん」

「なんだよ?」

「呼んでみただけ」

「なんだよ。それ……」

 苦笑しつつ、俺はそのことが心地よく感じていた。

「今日の宿題やってきた?」

「やってきたよ。見せてほしいんでしょ?」

「……ええと。うん」

 戸惑いながら応えると、彩愛さんは呆れたようにため息を吐く。

「あはは。正和くんは相変わらずだな~」

 そう言って鞄から今日の宿題を見せてくれる彩愛。

「もう。今回だけだよ」

 そう言いながらはにかむ彩愛は最高に可愛かった。

 まるで姉弟ができたかのような関係に、俺だけでなく彩愛も嬉しそうだった。

 でもそんなある日。

「彩愛さんって彼氏いるってホント?」

「え。そうなのか?」

 俺の親友、松川まつかわ平野助ひらのすけがそんな話を持ち出してきたのだ。

「知らないならいいや」

 それからなんとなく彩愛とは距離をおくようになった。

 そうして四季が巡り、21回目の季節を肌で感じている。おおよそ五年。ここまでくるのに21回の季節が訪れるとは。

 15の時に好きになった彩愛。20歳になった今日の同窓会でこの思いをぶつける……わけにもいかないか。

 彩愛にも結婚しているだろうさ。

 そう考えると一抹の寂しさを覚える。

 彩愛はいい人だから、きっといい人と巡り会っているだろうな。

 ぼーっと考え事をしていると、隣に平野助が座ってくる。

「よっ。久しぶり」

「久しぶりだな。二年ぶりか?」

「そうだな。それよりも、見ろよこれ」

 スマホの画面を俺に見せつけてくる。

 待ち受け画面に女の子らしき画像がうつっている。

「お前……」

「いいだろ。おれの彼女だ」

「ついに誘拐なんてしまったのか……」

「な! おれの彼女だって言っているだろ」

「どう考えても釣り合いとれてないって!」

「なんだとー。そう言う正和はどうなんだよ」

「俺……? 俺は全然」

「そうか。中学の時はあんなにモテていたのにな」

「俺がモテていた……?」

 初耳の言葉に平野助の言葉を疑う。

「ああ。女子の中じゃ、誰が付き合えるか? って議論になっていたらしいぞ」

「そうなのか?」

「あれ。気がついてなかったんだね」

 後ろの席に座っていた女の子がふふと笑う。

 その笑顔に見覚えがある。

「もしかして……彩愛さん?」

「そうよ。忘れていたわけじゃなくて安心した」

 忘れたわけじゃないが、雰囲気が変わっている。昔みたいな素朴な顔が、成長と化粧で美人さんに生まれ変わっているのだ。

「おいおい。彩愛さんと付き合っているんじゃなかったのかよ」

 平野助が呆れたように呟く。

「え。どいう意味だ?」

「さすがに怒りたくなるよ」

 俺の疑問に怒りを露わにする彩愛。

「お前、おれの話を最後まで聞いていたんじゃないのか?」

「……?」

「お前と彩愛さんが付き合っているのか? って聞いたんだぞ」

「そ、そうなのか!? 知らなかったぞ」

「それで私は五年も待たされたのね」

 彩愛は鞄から21枚の封筒を取り出す。

「これ、季節ごとに書いていたらたまったラブレター」

「ら、ラブレター!?」

「私、そろそろゴールしてもいいよね?」

「お、おう!」

「おめでとう! 彩愛さん、正和!」

 こうして俺は彩愛と付き合うことになった。


 21回目の春。俺は最高の季節を満喫することになった。

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季節は巡り、それでも変わらぬ思いがある 夕日ゆうや @PT03wing

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