21回目の幸せ

あーく

21回目の幸せ

「あなたは今日、ある21回目の出来事で幸せが訪れるでしょう。」


 僕は二十にと はじめ。20歳学生だ。たった1人の空間で、朝のTV番組の誕生日占いが聞こえてきた。普段は占いなんて信じないが、その中途半端な数字は少し信憑性がある気がした。

「21回目?なんでそんなに中途半端なんだ?今日何かあったかな………。」

 当然思い当たる節はなかった。今日も普段通り、大学で講義を受けた後バイトに通い、帰って寝るつもりだった。特別なイベントなんてないはずだった。


 僕は大学で友達に聞いてみた。

「なあ、今日の朝の占い観た?」

「観てねえな。お前占いなんて信じてんの?」

「なんか『21回目の出来事で幸せが訪れる』だってよ。なんでこんな中途半端なんだろうな。逆にリアルだと思って。」

「21といえば………今日21日じゃねえか!」

「あ!そういえば!でもそれだと何が起きても許される気がするなぁ。まあ占い自体、受け取り手がどう受け取るかによるものかもだけど。」

「じゃあ、サイコロは?」

「サイコロ?」

「あれ、全部の目を足すと21になるんだよ。」

「ん?1、2、3………あ!本当だ!」

「だろ!?それだ!」

「………だからなんなんだよ。」

「………みんなですごろくをしていたら1~6が全部出てあがりました、とか。」

「幸せの規模ちっさ!てか、先にあがったら他の人あがるまで待たないといけないじゃん!待ち時間暇じゃん!不幸じゃん!」

「だったらお前の彼女に関係あるんじゃ?」

「ユキちゃん?」

「お前の21回目の浮気が笑顔で許される。」

「それ不幸中の幸いだよね!?僕そんなに浮気してないよ!てか、そもそも浮気してないよ!ユキちゃん20回も浮気されててなに笑顔で許してんだよ!逆に怖いよ!」

「『仏の顔も21度まで』ってな。」

「『3度』だよ!どんだけ我慢強いんだよ仏!『3度』でキレていいぞ!」

「お前文句ばっかだな。じゃあお前が好きなAKB21(アクビトゥエンティ―ワン)に関係しているとか?」

「あ!それかも!今日TVでAKB21の21周年記念のライブの生放送するんだ。何か特別な演出でもするのかな~。」

「メンバーが誕生日で、サプライズにケーキ運んでくるとかな。」

「ありそう。推しの子が喜んでくれるとこっちも幸せになるからな~。」

「で、転んでケーキが台無し、と。」

「なぜ転ばす!?」

「でもメンバーはケガ一つありませんでした。めでたしめでたし。」

「だからそれ不幸中の幸い!」

「まあ、これで正体が分かったな。俺のお陰だな。」

「うん、ムカつくけどありがとう。スッキリした。無駄な時間を過ごした気もするけど。」


 こうして、僕は何事もなく大学とバイトを終えて帰った。大学に通うために、アパートの2階の部屋を借りていた。階段を上り、201号室の前に立つ。そして、ドアノブを回した。

「ん?鍵が開いてる?まさか、泥棒か!?」

 慌てて玄関で靴を放り出した。何が幸せな日だ。泥棒だなんて――。

 部屋の電気をつけた。その時――。

はじめ君!誕生日おめでとう!!」

「――ユキちゃん?」

「ごめんね。勝手に上がらせてもらったよ。」

 ユキちゃんは合い鍵をこちらに見せびらかせた。そういえばドアノブには荒らされた形跡がなかった。

 21………。そうか、今日は21回目の誕生日だ。

「なんだ。驚いたなあ、もう。」

「ふふふ。びっくりした?はいこれ、ケーキ――」

「………崩れちゃってるね。」

「あ――」

 やっぱり占いは信じられない。『今日、ある21回目の出来事で幸せが訪れるでしょう。』と言われたが、僕は毎日が幸せだ。ケーキ1つ崩れたところで、たとえケガをしたとしても不幸なもんか。

 僕には僕を大切に思ってくれている人がいる。ケーキが崩れようと、幸せな毎日は崩れない。

「いつもありがとう。」

 僕は崩れたケーキを口に運んだ。

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21回目の幸せ あーく @arcsin1203

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