人生大逆転

SYストーリー

人生大逆転

俺は加藤剛かとうつよし28歳だ。現在は加藤リハビリ施設の社長をしながら、人生を誤った少年少女の更生の手助けをしている。今こうして生きているのも夢みたいだ。昔の俺は人間のクズだった。


 人生が変わったのは今から24年前、俺が4才の時だ!交通事故に遭ってしまったのだ。意識不明の重体で病院に運ばれた。目を開けたのは翌日だったと、母親から聞いた。両親は医者からこう言われたと言う。


「お母さんお父さん、残念ですが検査した結果この子には運動機能障害があります。」と言われた母親は、

「この障害は治るんですか?」と、涙目で聞いたそうだ。

「残念ながら、この子の場合は家で育てるのは難しいでしょう。ここの病院のリハビリ施設で預かってもよろしいですか?」

母親と父親は悩んだ結果、俺をリハビリ施設に預けることにしたそうだ。


 当時、幼かった俺には親元を離れることは心寂しかった。その気持ちを抱えながら、4年間頑張ってリハビリをして小学2年の時に退院した。歩くことも、みんなと運動することもできた。母が迎えに来ていた。父は居なかった。


「剛、家に帰ろう。先生4年間うちの息子をありがとうございます。」と、母親は言った。俺も、「ありがとうございます。」と言った。

車の中で、俺は母親に問いかけた。

「お母さん、お父さんは仕事なの?」

「そうよ、仕事よ。夕方には帰って来るわよ。」

俺は夕方になるのを楽しみに待っていた。夕方になると父親が帰ってきた。


俺は「お父さん、おかえり。」と言った。でも、父親は怖い目で、

「どけ!邪魔だ!」と言った。俺は泣いた。すると母親は、

「ちょっとあなた子供に向かって、そんな言い方ないじゃない!」と言った。

「うるさい!黙れ!酒でも持って来い!」と、母親を殴った。


そう、父親は酒が大好きでそのせいか母親に暴力を振っていたのだ。そんな父親は暴力を、幼かった俺にまで振ってきたのだ。俺が間違ったことをした時はもちろんのこと、眠っている時も。そんな父親と暮らすのが嫌で小学4年時に母親と一緒に家を飛び出した。母親の実家に行き、そこから学校に通っていた。ここからまた新たな楽しい生活が始まった。


 そんなある日、家に一本の電話がかかってきた。母親は電話に出た。

「はい?もしもし加藤です。」

「もしもし、わたくしは4年2組担任の鈴木と申します。剛君のお母様でしょうか?」

それは学校の先生からだった。母親は剛の身に何かあったと思い心配そうに聞いた。


「はい、そうですけど…うちの息子に何かあったのですか?」

すると、先生の口から驚きの言葉が出たのだ。

「お宅の息子さんが…友達と喧嘩をして殴って怪我を負わせてしまったのです。今から学校に来られますか?」

母親は信じられないことに愕然とした。


「お母様、大丈夫ですか?」

「大丈夫です。すみません、すぐ向かいます!」

「4年2組の教室でお待ちしております。失礼します。」と言って電話を切った。

母親はカバンを持って家を飛び出した。そして車に乗り込み猛スピードで学校に向かった。15分後、学校に着いた。事務室の先生に、

「すみません、4年生の教室はどこですか?」と尋ねた。

「4年生の教室はこちらです。」と言って案内してくれた。

「ありがとうございます。」と言って、先生と息子とその友達が待つ教室へ向かった。


扉の前まで来ると、扉を2回ノックして、「失礼します。」と言った。

「どうぞ、お入りください。」と応答があったので深呼吸をして扉を開けた。そこには、剛に殴られ顔を怪我した前原海まえはらかいという名の生徒と海君の母親もいた。先生が、

「どうぞお座りください。」と言って、椅子に腰掛けた。


「この度は、家の息子がお宅の息子さんに怪我を負わせてしまい本当にすみませんでした。海君ごめんね。ほら!あんたも謝りなさい!」と言った。

「ごめん。」と言って、俺は頭を下げた。


相手の母親も、

「いいえ、家の海も剛君に嫌なことを言ったみたいで本当にすみませんでした。ほら!海も謝りな!」と言って頭を下げた。海も「剛、俺も言い過ぎたごめん。」と言って頭を下げ、2人は仲直りをした。


そして母親は家に帰って剛を祖父と叱った。母親は、俺に問いかけた。

「嫌なことを言われてもすぐ人を殴ったらダメでしょ⁈」

「そんなことは分かっているけど、ムカついたからつい殴ってしまった。」と答えた。祖父はそんなことを言う俺に

「ムカついてもすぐ殴ったらダメだと言うのは分かっているんだろ?次、何か問題を許さないからな?気を付けろよ!」と怒鳴り声で言った。

「分かったよ。ごめんなさい。」と言って自分の部屋に行った。それから学校から呼び出しが来ることがなかった。


 時が2年過ぎていた。そんなある日のこと母親が会社で仕事をしている時、スマホに一本の電話がかかってきた。学校からだった。母親はまさかと思いながら電話に出た。

「はい?もしもし。」

「もしもし。私、6年3組担任の木下と申します。剛君のお母様でしょうか?」と言った。母親は剛がやらかしたと思いながら、

「はいそうですが、剛が何かやらかしたのですか?」と言った。

「はい、友達2人を殴って怪我を負わせてしまったのです。お忙しいところすみませんですが、今から来られますか?」

母親は、剛に裏切られた気持ちで胸がいっぱいだった。

「ま…またですか⁈本当にすみませんでした。すぐ向かいます。」

「6年3組の教室でお待ちしております。失礼します。」


母親は、2回目だったのでイライラの気持ちで学校に車に乗り込み猛スピードで向かった。学校に着くと、急いで階段で3階まで上がり教室の前まできた。扉を2回ノックした。

「失礼します。」

「どうぞ、お入りください。」と応答があったので扉を開けた。


そこには2年前に見た光景が広がっていた。

「どうぞお座りください。」

母親は椅子に腰掛けた。


そして、謝罪した。

「また、家の息子が2人を殴って怪我を負わせてしまい本当にすみませんでした。君たちもごめんね。」

すると、先生が更に驚きの言葉をした。


「お母さん、2年前にも暴力事件を起こしていますよね?でも、今回は怪我を負わせてしまったことだけでないのですよ。」と言って、たくさんの文字が書いている紙を差し出した。

「これは何ですか?」

「とりあえず読んでみてください。」と言われ、恐る恐る開いて読んでみた母親は愕然とした。


「これ本当ですか?」

「はい、そうですね。今回はですね、暴れて窓ガラスを1枚割ったのと、2人の両親から病院代の請求がきているのですよ。」

それは、学校側からと相手の両親たちからの請求書だった。その被害総額は10万円を超えていた。とりあえず、今日は謝罪をして10万円は後日払った。


「本当にすみませんでした。」と言って、頭を何度も下げた。剛は頭を下げないし、ずっと下を向いて態度も悪かった。そんな母親は俺を見て、

「ちゃんと謝りなさい!」と言ったが、俺は下を向いたままだった。


母親は問いかけた。

「何でまた殴ったの?しかも2人も。嫌ことを言われたからなの?」

俺は頷いた。でも、何を言われたのかは話さなかった。俺が殴ったのは、2人にこんなことを言われたからだ。


それは昼休みの時、2人に体育館裏に呼び出された。

「お前さ、最近調子に乗っているよな。」

「そうだよな。1人じゃ何にもできない弱虫だからな。」

それにムカついた俺は2人を殴ってしまったのだ。それを素直に伝えることができなかった。母親は、

「本当にすみませんでした。」と言って、教室を後にした。


その日の夜、母親は今日のことを祖父に話した。話しを聞いた祖父は、剛を呼んだ。

「剛!一回来い!」

「何だよ!」

「母さんから聞いたけど、今日学校で何があったんだ!答えてみろ!」

「別に何もなかったよ!」と嘘をついた。嘘をついた俺を見て祖父は、

「本当のこと言えよ!学校でまた問題を起こしたんだろ⁈もうお前なんか知らない、出ていけ!」と勘当した。

「こんな家こっちからお断りだ!」と言って、俺は家を飛び出した。


 時は過ぎ、剛は中学生になった。家を飛び出して半年が経っても剛は帰って来なかった。そんなある日、母親がニュース番組を見ている時だった。

「今日の午後1時30分頃、13歳の少年が窃盗、無免許運転の容疑で現行犯逮捕されました。」と流れてきた。


母親は、まさかと思いながら祖父とすぐに刑務所まで向かった。そこに剛がいた。なんと、剛は非行に走ってしまったのだ。母親と父親は言葉を失った。

「罪を償って早く出てこい。」と言って、刑務所を後にした。


剛は2年で刑務所を出た。そして、祖父の許しを受けて家に戻ることができた。中学校にも行かせてもらったけど、わずか1年で不登校になった。


 時は過ぎていき、剛は高校生になった。また勘当され家を飛び出し、暴走族の世界に入っていた。高校2年の時には150人の暴走族をまとめる総長になっていた。喧嘩や喝上げは日常茶飯事、夜は暴走で毎日のようにバイクで走っていた。高校3年の時に、暴走行為で再逮捕された。逮捕されて1週間のこと。


「受刑者番号132番、面会だ。」と警官に連れられて面会室にやってきた。そこにいたのは祖父だった。

「久しぶり。元気にしていたか?」と優しい声で言ってくれた。俺は突然のことに驚いた。


「何で来てくれたの?俺のことはもうどうでもいいじゃないの?」

祖父は俺の目を見て、涙を流して言った。

「そんなことはない。お前が家を飛び出し時から、ずっと寂しかった。」

それを聞いた俺も涙を流した。 


「母さんは?仕事なの?」

すると、祖父は涙を流しながら静かに語った。

「母さんは…3日前に自宅で亡くなったよ…。」

そう、母親は剛が逮捕されてから精神的ストレスで帰らぬ人となってしまった…。


祖父は、

「母さん、亡くなる前に剛に会いたい、会いたい…。」と言っていたことを話した。このことで剛は、「もう二度と罪を犯さない。」と更生を誓い21歳の時に刑務所を出た。


そこから、猛勉強して色々な資格を取り、26歳の時に加藤リハビリ施設を設立した。最初は少ない職員だったけど、今は20名の職員が働いている。また、非行に走った少年、少女とその親の手助けを行う活動もしている。


今日も剛は世の中の人々を助けている!後悔のない人生みちを歩ませてあげるために・・・。


―END―

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