Re Start

それから程なく僕はガッコウというところに通いはじめた。その場所は人でいっぱいだった。ざっとすれ違った人数を数えても両手じゃ足りないくらい。僕は小柄な女の人に連れられて『1-2』の札がついてある部屋に到着した。キィィと鋭い声を上げる戸を開けるとまるで時間が止まったみたいな視線を浴びた。みんな同じ服を着ている。

 

 チャイムが鳴って、みんなガタガタと所定の位置に戻っていく。へぇ、自分の席なんてあるんだ。

 「おはようございますー。えーっと、もう聞いてるかもしれないけどこちらは新しくこのクラスに転校してきた赤崎 空君です!」

 「あ、えっと、赤澤空です――――」

 何を話せばいいんだろ。未来から来ましたなんて言えないし。

 「ちょっと遠いところから来ました。坂町一丁目に住んでます。よろしくおねがいします。」

 「じゃーぁ、あそこの窓際の空いてる席座ってもらいましょうか」

 こくりと頷いて席につく。みんな興味深々な目で僕を見つめてて恥ずかしい。

 それからというものの知らないことの連続だった。あんなに長い時間拘束されたことがなかったからとてつもなく疲れた。キュウショクってやつは美味しかったけど。

 帰り道、僕は浜辺に寄ることにした。こっちに来てからと言うものの僕のお気に入りスポットになっていた。近くのコンビニで買ったアイスクリームをかじりながらぼんやりとこれからのことについて考えた。

 僕はここで生きていけるんだろうか。あのジュギョウで答えられなかった時の周りの反応がとてつもなかった。まるで宇宙人を見るような目。前の世界での学習の記憶はメモリごと摘出されてしまったから一からやるしかないようだ。英語も数学も何を言っているのかわからない。国語だけが救いだ。そこまで言葉が変化してなくて本当に助かった。

 誰かが浜辺ではしゃいでいる。あの人たちはきっと何も考えなくても大丈夫なんだろうな。そんなことを考えていたら集団の中にいた男子がこっちへ近づいてきた。僕と同じセイフクを着ている

 「もしかして今日の転校生くん?」

 「え、はいそうですけど」

 「ひょー!やっぱイケメンだなー」

 「?」

 「なんかふわふわでイケメンな男子が来たーって噂になってたんすよ?」

 ふわふわ?イケメン?何それ

 「あっ、なんかSNSとかやってる?」

 「多分やってません」

 多分って…と言いながらケラケラと笑い出した。

 SNSとか知らないし。変な人。

 「変わってるね、君」

 「はい?」

 「俺、君と仲良くなれそう」

 「は、はぁ」

 「これ、俺のIDだから。SNS始めたら追加してちょ」

 そう言って小さい紙切れを手渡した。どうやら面白い人と友達になれたようだ。

 小さくて大きな出会いだった。

 

 ちょっとだけ明日の学校が楽しみになった。

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シンニンゲン Leo @leo_07245

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