第3話 キュートでポップなトマトジュース!


突然失礼! 私の名前は新見にいみ 吉良見きらみ

至って普通のJK2! 女子高校2年!

え、エルフウイルスはどうしたって?

そんなもんある訳ないんだにゃん~☆


「るんたった~☆」


今日は、幼馴染の露崎譲二くんとサバ研部室で待ち合わせ!

いや、ホントは待ち合わせなんかしてねーよ! 嘘オツって感じ!

でもでも、キラミは幼馴染のジョーくんが大好き!

だから、無理やりにでもキラミのことを意識させちゃうんだから~☆


「ジョーくん! 来ちゃった☆」


私はヘッドホンを耳に当て、超アガる音楽を掛けた。





幼馴染のキラミがドアを開けた時、僕こと霧崎譲二はちょうど――

金髪碧眼のエルフの肩に、唸るチェーンソーを突き立てているところだった。


「え……」

「うわあっ……! 違うぞ、キラミ。これは弾みで!」


僕はチェーンソーのスイッチから指を離し、幼馴染に言い訳をする。


「うぐぐぐ……」

「あ、秋?」

「まさか、それ……秋くん?」


すっかり美少女エルフの姿となった秋。

彼……いや、彼女は痛がることもせず、何か小声で呪文を唱える。

そして僕に笑いかけた。


「なあ、親友。キスしよーぜ」

「いや、この状況で何言ってんの、お前!」

「いいじゃん。キスしよーぜ」


金髪を振り乱して、大きく実った二つの果実を震わせる秋。

まさかこの男友達は、よりにもよって僕を誘惑しようとしているのか。

それも血まみれのままで。


「取りあえず、チェーンソーを抜かないと……」

「逃げるつもりか? させねーぞ」


僕が秋の身体から引き抜こうとしたチェーンソーの刃を、秋自身が掴んで抑える。

その時、チェーンソーのスイッチが勝手に入った。

これ元々中古の年代物だからな。仕方ない。


「KYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA~☆!!!」

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」


チェーンソーの刃が回転し、吹き出した秋の血がキラミの顔に掛かる。

ピ○シブで言うところのぶっかけだ。

そうやって、赤い液体をぶっかけられたキラミの頭からヘッドホンがすっぱ抜け、BPM140くらいのテンポの良い曲が聞こえてくる。

最近デビューした声優アイドル“夜露死苦”のポップでキュートな新曲だ。


その曲のテンポに合わせて。

僕が引き、秋が逆方向に押して、図らずも運動会の綱引きのようにチェーンソーを前後させる。


『Let's dance~! Foo! 塩分! 鉄分! 踊り出そうー♪』


その音楽のリズムに合わせて。

チェーンソーを持って、その主導権を取り合う僕らは、赤い“トマトジュース”をまき散らしながらに社交ダンスみたいなステップを踏む。


「ヒィイイイッ☆!」


そんな異様な様を見たキラミが、足元にキラキラと輝く水溜まりを作って、その上に崩れ落ちた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

全人類エルフ化!? ~僕は絶対に美少女になりたくないので、対ゾンビ戦術で無双します 松葉たけのこ @milli1984

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ