2.百日前
それは二十一世紀の後半にして、この物語の主人公たちに焦点を合わせるほんの百日前のことでした。世界のへそ、
しかし、こうした悪影響は、ちっぽけな世界の不和に過ぎなかったのです。どうしてかと言えば、ネーブルから湧き出る
世界が混乱する中、ついにジャンクはネーブルに最も近いピトケアン諸島に腐食したガラクタとして押し寄せました。それでもなおのことネーブルからのジャンク出現は治まりません。この頃、これに対抗して全人類が結束した国連の全体対策会議では、とうとうネーブルに向けて制御小型核弾頭を投下することが決定しました。各国の
ですが、これで丸く収まるはずがありません。ネーブルから万物は消え去ったとは言え、しばらくするとまたどんどんと、地中からたくさんの物が出てくるのです。次から次へ、何度も何度もネーブルを攻撃しますが、まるで歯が立ちません。
それにもう一つ、地球に恐ろしいことが起きてしまったのです。南大西洋の東部海域、ナミビアの一五〇〇キロメートル西方にも大穴が生じました。それもこちらはあらゆるものを吸いつくす、ブラックホールのような穴でした。ネーブル(Navel)の反現象であるとしてリバン(Levan)と名付けられたそれは、世界中の海水と海生生物を吸い込んでしまいます。もちろんネーブルから出たジャンクもそこへ吸収されるのは不幸中の幸いでしたが、海の水がどんどん減り行く今、もはや地球環境の崩壊すら時間の問題でした。
そしてついに、海をわたってそれぞれの大陸に流れついたガラクタは、絶望の淵にいる人々の元へ:森林や農園、工場、
食糧難に陥った人々は買いだめしていたものをすべてくらい尽くしますから、その後は
滅びゆく人々の生活。そこにわずかに残った人類の文明は、エベレスト山麓に本拠地を移した国連でした。ただ、そうした少々空気の薄い国連の席にどっかりと構える老人たちは、ついに一つの結論を出したのです。
「人類は、滅亡する」と。
しかし、人はそんなにやわではありません。これから語り継がれるお話は、もちろん世界中をジャンクの地表に覆われた世界――空を飛び、ある都市が浮遊し、再生医療とナノ技術そして
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