古代中国の書庫で歴史書を書いた人の自伝を読んだ

三枝 優

宮中の書庫にて

「これはすごいですね・・」

「まだまだ、たくさんの書庫があるんですよ。ここは主に歴史書です」


 官吏によって書庫に案内され、ヒロは感動した。


 広々とした室内にとてもたくさんの棚。

 そして、それぞれには竹や木で作られた札が大量に整理されている。


 全部、書物なのだ。


 しかも、今は紀元前。

 ヒロは他の国では、これほどの多くの書物と言うものを見たことはなかった。

 いや、他国には”書物”と言うほどの文字を書き連ねたものはこれほどはなかった。

(注:この当時ヒロはギリシャに行ったのはギリシャ文字ができる前までです)


「ヒロ様。それではゆっくりご覧ください。こちらに胡床を用意してございます」

「あ・・ありがとうございます」

 海外から入って来たという胡床という簡易な椅子が用意してあった。

 この国は栄えているが、どんどん海外から新しい文化を取り入れている。


「ヒロ・・俺は書物なんか興味ないよ?街を見学に行ってくるね」


 ヒロの仲間のカイはつまらなさそうに出て行った。


 報酬を選ぶときにはカイとひと悶着あった。カイが金銭をもらおうと主張したが、ヒロは書物を見せてもらうことを強硬に主張したのだ。

 なぜなら、今まで見たことがないから。


 書物は・・予想以上だった。

 他にも大量にあるそうだ。


 一つを手に取る・・・

 そこには二千年以上前の皇帝について書かれている。


 なんと、ヒロが生まれる前かもしれない!

「自分より古いことを知ったのって・・初めてかもしれない・・」



 ヒロは夢中になって読んだ。



 書庫を見ているうちに、ある書が気になって手に取ってみた。

 そこには・・この書をまとめた人物の自伝。


 彼は、歴史書の作成を父から受ついだ。

 やがて・・些細なことから投獄。

 それでも、宦官となり減刑によって牢獄から出て行く。


 やがて、使命感より歴史書の編纂に没頭したのだろう。

 各地からの伝承や、四散した書物の収集。

 そうして、この大量の歴史を文字にまとめ上げたのだ。


 おそらくは多くの仲間たちと共に実施したに違いない。

 彼と仲間たちは何を思って書き記していたのだろうか。

 おそらくは、この広い国土を足で調べ上げ。

 そして、それらを整理し、文字に起こしていく。


 いつか、読んでくれる人のために。


 彼らの努力の結果、ヒロは数百年たってこの書物を手に取り読むことができた。

 この先、何年・何十年・何百年。

 この書物を読む人がいる。



 人間の命は短い。

 だけども、書物と言う形にして文化を受け継いでいく。



 ヒロは、書物を言うものを。そして、人間というものを見直した。


----


 夕方になり、宿でカイと落ち合った。

 宿の近くの酒房で食事をとることにする。


 残念ながら、二人とも子供ということで酒を飲ましてはもらえない。

 でも料理は、今までのどの国よりもおいしかった。

 ちょっと味付けが濃いのが難点だけど


「それで、書物はどうだったんだ?なにか面白いこと書いてあったかい?」

「地理の書物や歴史の書物を読んだよ。

 なんでも、東の海の先にやはり国があって、鬼術とかいうものを使って国を統治してるんだって」

「へえ・・魔法なのかな?」

「そうかもしれないね、そのうち行ってみようよ」


「あとは、歴史書がすごかったね。書いた人の自伝が面白かったよ」

「歴史ねえ・・どれくらい昔のことが書いてあるんだ?」

「なんと!一番古い記述は二千年以上昔からの記録があったよ!

 僕が生まれる前だよ!

 この国の最初の皇帝は”黄帝”と言ってね。弓矢を発明したり、医術が得意だったらしいね。

 いろんなことを発明したり、農業を普及させたり。

 最期は龍に乗って西の空に消えていったなんて書いてあったよ」


 それを聞いているとき、カイは物凄く ”びみょ~な” 表情で聞いていた。


「なんだよ?その表情は?」

「あのな・・・」


 カイは金髪を揺らしながら小さな声で耳元で話してきた。



「その黄帝って・・・俺のことだ・・・」




◇◇◇◇

 参考作品

「大国主大神と水の精霊との出会いの話」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354055266589888

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古代中国の書庫で歴史書を書いた人の自伝を読んだ 三枝 優 @7487sakuya

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