夏寧ss

まだ昼のうだるような暑さが残る夏の夜の日のこと。

月島夏寧は、自室に籠もってpcでソシャゲをしていた。


「あ〜、勝ったー」

夏寧は、長時間のゲームで凝り固まった背中と腰をほぐすように、椅子の背もたれでのけぞるようにして思いっきり背中を伸ばす。

「・・・お?」

伸びた夏寧の視界にふと、夜半の月が映り込んだ。

「そういや今日は満月だって、とーかが言ってたっけな」


周りからのイメージとは裏腹に、夏寧は月や星など自然の景色が好きだった。

自分の苗字に「月」が入っていることも相まって、昔から月をよく眺めていた。

そんな自分を見てか、昔は祖母がよく、星の見える丘に連れて行ってくれたのだった。


「今度さえちとでも山登りに行こっかな。紅葉を見たいって言ってたし」

夏寧は椅子から立ち上がって背中をうーんと伸ばす。

「ハルなら『あの月に齧り付きたい』とか言うんだろうな。ったく、どんな心境ならそんな詩的なことが思いつくんだか」

夏寧は微笑みながら悪態をつく。

深春の気持ちがわかるのではないかと、ふともう一度月を眺めてみるも、空に浮かぶのは、やはり只の綺麗な月でしかなかった。

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