隣に引っ越してきた美少女が幼馴染だった件

司波翔平

第1話 転校生

「チリリリリン」

 この目覚ましの音で新たな一日が始まるのだと実感する。しかし、すぐに起きれるというわけではない。それも一人暮らしをしているため、だれにも起こしてもらうことが出来ず、遅刻が日常茶飯事だ。


 目覚ましの音で目を覚まし、体を起こす。俺の名前は神崎傑かんざきすぐる。これといって得意なものはないが何をさせてもそれなりにできる器用貧乏な高校二年生。強いて言うならゲームは得意だと思う。ゲームではMMORPGで日本ユーザーランキング3位まで上り詰めたこともあったということもありゲームは得意だと言えるだろう。


「今日も一日スタートかぁ」

 

 俺はあまり学校という場所が好きではない。だから一日が始まり、その日が休みでなければため息がこぼれる。しかし、憂鬱だからといって友達がいないわけではない。だが、友達が少ないのは事実だ。


 そんなことを思いながら俺は時計の時間を見る。


「・・・・・」


 時計の針は8時50分を指している。いくら学校に近いマンションといってもここから歩いて15分はかかる。冒頭でも言った通り俺は遅刻が日常茶飯事だ。それが始業式であっても・・・


「はぁはぁ......間に合うか?」


 俺は必死に走る。学校まで走れば間に合うかもしれない。この学校では3日遅刻をすれば約50枚もある漢字の書き取りをしないといけないというルールがある。俺は次遅刻をすればあの地獄をまた味わうことになる。そんなことは御免だ。だから必死に走る・・・


「ふぅ・・・間に合った」


 もうすでに始業式は始まろうとしていたがギリギリ間に合ったようだ。俺はクラスが掲示されている掲示板の方へ駆け寄り掲示板を見る。


「俺のクラスは・・・A組だな」


 始業式は体育館で行われるため急ぎ足でそこに向かう。体育館に入るとほとんどの生徒が既に席についており、席についていないのはガラの悪い先輩達ばかりだった。


 そんな先輩たちに絡まれないよう、静かにA組の席に向かっていると赤毛と茶髪の二人が手を振って俺の事を呼んでいる。


「おーいすぐる


「こっちだよ」


 俺の名前を呼んだ赤毛のスポーツ刈りの男子は如月修一きさらぎしゅういち。彼は野球部に所属しており、2年生でエースを任されている。先生達から彼への期待は大きいようだ。


 そして俺を呼んでいるもう一人の男子は末谷航すえたにわたる。彼は女の子のような見た目の男の子でよく女の子達に可愛がられている。そしてなにより、真面目で一年の頃、俺の成績が悪い時に一緒にテスト勉強をしたこともある。


 この二人が俺の唯一の友達だ。


「また同じクラスだね。」


「同じクラスでよかったよ。」


 本当に同じクラスでよかったと思う。この二人が同じクラスでなければ俺の高校二年生は大変だったことが容易に想像できる。そう話していると・・・


「また遅刻ギリギリかよ!」


 修一は言葉はキツいが根がとてもやさしいということは知っている。現に今も俺の事を心配してくれている。


「大丈夫大丈夫。ちょっと寝坊しただけだから。」


 ムスッとした顔で航が俺の方を向き口を開く。


「大丈夫じゃないでしょ。最近寝坊多いし、気をつけないとダメだよ。」


 このように航も俺の事を心配してくれている。本当にいい友達だと心から思う。だからこそ、そろそろしっかりしないとな。


「次からは気をつけるよ。」


 俺がそう言うとすかさず修一が言葉を返してきた。


「遅刻魔のお前が起きれるのか?」


 事実だからこそ心にグサッとくる一言だが、あいつなりに心配してくれているのだろうと思う。


「努力してみるよ。」


 起きられる!と言いたいところだが、俺自身、起きれる自信があまりない。だからこの返答は俺の中で最適解だ。


 そのままつつがなく始業式が終わり、クラスに戻ることになった。そして俺たち三人は一緒にクラスに戻っている。


 「そういえば傑、今日転校生が来るらしいぞ!女子だったらいいよなぁ」


 そんな話を修一が振ってくる。修一は何処からその情報を手に入れているのかは知らないが色々な事を知っている。これもその一つで俺は今初めてこの話を聞いた。


 「そうだな。女子だったらいいな。」


 俺は女子は苦手だが、修一は女の子とよく話したり、遊んだりもしている。俺には到底真似できないことだ。

 

 そんな話をしていると教室に着いた。そして自分の席に座る。俺の席は窓際で前に修一左斜め前に航が座っている。三人とも頭文字が近いからこういう席になっている。


 「注目!!」

 

 眼鏡をかけた真面目そうな先生が部屋に入ってきた。彼は担任の先生だ。そして黒板に名前を書き始める。そこには、篠崎碧しのざきあおいと書かれている。本当に転校生が来るんだなぁ。そして、先生が名前を書き終える。


 「入ってきてください。」


 先生がそう言うと、ドアがガラッと音を立てて開く。そして入ってきたのは見たことのある顔立ちをした誰が見ても美少女と答えるであろう清楚な女子高生だった。

 

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