桜と煙草と縦ロール

生田 内視郎

桜と煙草と縦ロール

「ゆめちゃんって本当ボーイッシュな服しか着ないよね 今日もジーンズに半シャツって」

中学からの友人であるひなはアイスレモンティーのストローをクルクル回し、氷の心地よい音をカラカラと鳴らしそう告げた

「あんたみたいな女の子した服が似合わないだけよ

大体アンタこそ大学生にもなってそのフリフリのゴスロリはどうなのよ」

私はそう言ってブラックコーヒーを口にふくむ。

「コレ?可愛いでしょ ゆめちゃんに会うから久しぶりに気合い入れて来ちゃった」

ひなはそういうとペロッと悪戯っぽく舌を出した

今時はこういうあざといぐらいの方が男ウケがいいのか

実際ひなはとても男にモテる

とはいえ、流石にハタチを超えて縦ロールはどうか

余計なお世話だと思いつつも、つい、いい歳してその格好はどうなのよと会う度に毒づいてしまう

「ゆめちゃんは可愛いと思わない?」

「いや可愛いけどさ いつまでもそんな子供みたいな格好してたら恥ずかしくない?」

「ゆめちゃんは心の中の少女が失踪しちゃってるんだねぇ」

「何それ」

「女の子はいつまで経っても女の子ってことだよ」

「ババアで悪かったわね」

ケッ、と灰皿を寄せて後ろポケットの煙草を取り出し咥える

「いつもの格好良いゆめちゃんも好きだけど、偶には可愛いゆめちゃんも見たいなぁ」

「勘弁してよ 似合わないって」

「そうかなぁ」

「そうだよ」

「ね、今日私に会うからわざと雑な格好して来たんでしょ」

「は?」

「ゆめちゃん背が高いから、後ろから見たら男の人に見えるもんね」

ふー、とひなに煙草の煙を吹きかける

やー、とひなはわざとらしくパタパタと手を振る

「当たった?好きな子にわざと悪戯するの、男の子っぽいね」

にたり、とひなが笑う

ああ、図星だよコンチクショウ

照れた顔を見られたくなくて、私は遠くに咲いた桜の木に顔を逸らした

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桜と煙草と縦ロール 生田 内視郎 @siranhito

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